騒霊は屈折する:第4話 マンション


 香住は、近所の人の態度が、いつもと違うのを感じていた。

 共有廊下で隣人とすれ違ったときも、香住の挨拶に対して、みんな逃げるように退散する。


 ――やっぱり誤解されているんだわ。


 香住は、いたたまれない気持ちで玄関のドアを閉めた。


 部屋に入ると早速、電話機に向かい、早く原因を突き止めて欲しいと、管理会社に催促の電話をかけた。

 管理会社の返答は、『今、懸命に原因追及をしているところなので、もう少し待って欲しい』との旨を伝えられた。

 香住は、その原因が、ウチではないことを、隣人に伝えて欲しいと強く訴え、電話を置いた。


 その日の夕方、マンションのエントランスホールの掲示板に、張り紙が張り出され、各家のポストボックスに『管理事務所からのお知らせ』と書かれた紙が投入されていた。


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  最近、当マンション内で、深夜遅く断続音が聞こえると、一部の入居者様から苦情がでています。

  当社としても直ちに原因追及をしているところですが、現在のところ、原因と思われる事象および、その箇所を特定するまでにはいたっていません。

  したがって、特定の入居者様に対するいらぬ詮索、誤解による中傷のたぐいは、なさらないようにお願いします。

  当社の調査結果がでるまで、ご近所様に迷惑がかからないようにお願いします。


             管理 株式会社クリーンコート

             担当 足立あだちみのる


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 香住は、その文面に眼を通し、取り敢えずは安心した。


 しかし、その日の深夜。

 再び、その断続音が聞こえてきた。


 コツコツ……、コツコツ。


 コツコツ……、コツコツ。


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