騒霊は屈折する:第2話 マンション


「今日会社から、管理会社のほうに電話しておいたから」

 孝之は帰宅するなり、そう告げた。


「それで、管理会社の人は何と?」

 夕食をテーブルに並び終えてテーブルに着くと、香住は孝之の顔を見詰めて尋ねた。


「それが、どうも妙なんだ」

「何が?」

 香住が、孝之のグラスにビールを注ぎながら尋ねる。


「実は、周辺の住人からも苦情が来ているとは言うんだが……」

「やっぱり。みんな迷惑していたのね」

「いや、そうじゃないんだ」

「そうじゃないって、どういうこと?」

「実は、その苦情がすべてウチに対してなんだ」


「えっ?」

 意外な展開に、香住は大きく眼を見開いた。


「夜中に三〇五号室から、変な物音がして困ると、口を揃えて言うものだから、今日にでも、お宅にお伺いしようと思っていたところだと、先方は言うんだ」

 困惑した顔で孝之が伝える。


「そんなぁ……。それで、貴方は何て言ったの?」

「もちろん、『何を言っているんだ。こっちこそ、その物音のことで電話したんだ。えらい迷惑だ』って言ってやったよ。そうしたら、『妙ですね。とにかく、しばらく様子を見て、原因を確かめるようにします』ってさ」

「それはそうだけど……、何だか気味が悪いわね。あの音は一体何なの?」

「それは、僕にもわからない……」


 その日の夜は、何事も起こらず、久し振りの静寂が訪れた。


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