エピローグ

双数は対偶にある:レトロスペクティヴ


      *


 滝沢は翼と向かって、喫茶『ぷらいむナンバ』の椅子に座っていた。


「一応これで、今回の事件は解決しました。しかし、わからないことがひとつあります。何故、優子は翼さんのところを訪れ、真犯人の捜索を依頼したのでしょう? それが、僕にはどうしてもわかりません」


「ええ、私もそれが気になっていたところなの。いくら妹さんの嫌疑を晴らすのが目的でも、結局自分を探せ……、ってことよね」


「彼女の行動は、不可解です」滝沢が言う。


「ええ、やっぱり彼女は多重人格だったのよ。そのことは間違いでなかった。だから、姉の人格で本当に妹の無実を証明したかったのよ。姉として当然だわ。だから、私の事務所に依頼に来たのよ」


「日記を読むと、優子と裕子は、幼いときからお互い入れ替わって、相手を驚かすという遊びをしていたらしいんです」滝沢が言う。


「双子ならではの悪戯ね」


「実の母親でも一瞬わからないときがあると、言う人もいるらしいですよ」


 ――二人は、大人になった今も、その遊びをしていたのだろうか……?


 いつの間にか翼の眼には、涙が溢れていた。


 ――悪戯は二人で……。


「いつも、二人の心は繋がっていたのですね」

 気がつくと、滝沢の眼も潤んでいる。


「もう終わったのよ……。最後に、姉妹はひとつになったのよ」

 翼は、そう言って滝沢に微笑みかけた。


 滝沢が、勘定書きを手にして言った。


「今日は、僕が払いますよ」




     了

 【第一奇譚:「双数は対偶にある/The dual is contraposition」】


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