双数は対偶にある:対偶 -3


      3


 翌朝、翼は山陽本線で、京都府船井郡園部町へと向かった。

 優子を養女として迎えたという伯父の家を訪ねるためだった。


 翼は、まず市役所や、警察署へ行き、出来るだけの情報を集めた。


 そこで翼が得た情報は、予想を裏切った事実だった。

 伯父が養子に迎えたのは裕子のほうだということだった。

 裕子の友人の話では、裕子は宇治の叔母に引き取られたということだったのに……。


 姉妹の伯父は、地元では有数の不動産業を営んでいたが、当人に癌が発見され、治療の甲斐もなく、一年ほど前に他界したというのだ。


 目的の家の周辺には、新興住宅が立ち並ぶ。

 その一画に大きく『小川不動産』と看板を掲げた建物があった。

 不動産業は現在、伯父の義理の弟が後を引き継いでいた。


 そこで伯父の義理の弟に会い、裕子の消息について尋ねると、伯父が他界したと同時に、裕子は、京都の家と少しばかりの遺産を相続した。そして、三ヶ月ほど前に荷物を持って家を出て行ったという。それっきり連絡も無く、その後のことは何もわからないと言った。


 翼は、情報を得るために近隣を歩き回ってみたが、近所の人のたちは新しく越してきた人が多く収穫は芳しくはなかった。


 翼は、帰りの電車の中で、頭の中を整理しようと試みた。

 電車の窓から見える景色がぼやけていく。


 裕子は園部を出たあと、京都で大学生活を始めたのだろう。


 ということは、宇治の祖母に引き取られたのは優子の方だったのか?

 そうなると、私の前に現れた女性は本当に優子だったのだろうか?

 存在しないと思われたモノが存在し、存在すると思われたモノが幻なのか?

 客観は安定しているが、主観は不安定である。


 優子という人物は、果たして本当に存在しているのか?


 この事象を説明するには、ある結論に達するしかないと翼は思った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援した人

応援すると応援コメントも書けます

ビューワー設定

文字サイズ

背景色

フォント

一部のAndroid端末では
フォント設定が反映されません。

応援の気持ちを届けよう

カクヨムに登録すると作者に思いを届けられます。ぜひ応援してください。

アカウントをお持ちの方はログイン

フォロー機能を活用しよう

カクヨムに登録して、気になる小説の更新を逃さずチェック!

アカウントをお持ちの方はログイン

フォロー機能を活用しよう

カクヨムに登録して、お気に入り作者の活動を追いかけよう!