第二章 対偶

双数は対偶にある:対偶 -0


      *


 滝沢は、小川優子と名乗った人物を洗っていた。


 ――彼女は一体何者なのか?


 彼女は何故、裕子の姉だと名乗ったのか?

 もしかして、その人物が犯人なのではないのか?

 まさか、その人物こそ裕子自身だったのではないのか?

 エレベータで階上に向かう彼女をマンションの住人が目撃している。

 その時間に、彼女は何故、一階にいた?

 部屋に中嶋を置いたまま、何かの用事で、一旦外に出ていたのか?

 そうだとすると、帰って来てから短時間で、中嶋を殺害したことになる。

 大の男に抵抗されずに、殺害が可能なのか?


 ――わからない……。


 彼女は自分を住人の姉だと偽って、第一発見者を装った。

 そして、発見当時の状況を偽った。

 そうすれば、すべての辻褄が合う……。


 いや、彼女には身寄りが無いというのは明白だ。

 そんな彼女が、姉だと名乗って通報するのはおかしい。

 そんな、すぐにばれるような嘘などつくはずはない。

 隣の住人が、十九時ごろに外でドアを叩く音と、女性の声を聞いている。

 ドアノブに第三者の指紋が残っている。

 やはり、誰か他の人物がいたのだ。

 その人物が、裕子を連れ去ったのだろう。


 滝沢の思考は混迷の中に入った。


 裕子の交友関係を調べていくことで、いずれその人物に辿り着くだろう。

 滝沢はそう考えている。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

応援した人

応援すると応援コメントも書けます

ビューワー設定

文字サイズ

背景色

フォント

Androidでは正しく
設定できないことがあります。

応援の気持ちを届けよう

カクヨムに登録すると作者に思いを届けられます。ぜひ応援してください。

新規ユーザー登録無料