インターローグ

双数は対偶にある:インターローグ


      *


 ――お姉ちゃん!


 階下から母親の声がする。


 テレビゲームに夢中になっていた姉妹は、コントローラの操作を止め、聞き耳を立てた。


「お母さんが呼んでるよ」


「何かなぁ?」


 二人は互いに顔を見合わせた。


「あっ、そうだ。いつもの――やる?」

 一方の少女が、問いかける。


「うん、いいよ」


 返事をした少女は、部屋を出て一階へと階段を下りていった。


「お母さん、何ぁに?」


「ああ、悪いけど、この回覧板、隣の久保田さん家に持って行ってくれない?」


「うん。いいよ」


「じゃー、お願いね」


 少女は母親から回覧板を受け取ると、一目散に隣の家へと向かう。


「おばちゃん。久保田のおばちゃん!」


「いらっしゃい。えーと……?」


「姉のほうだよ」


「ああ、お姉ちゃんのほうだね」


「はい、これ」


「ああ、回覧板かい。偉いね。あっ、そうだちょっと待っててね」そう言って、一旦奥に引っ込む。


「はい、これ、お駄賃に――」


「おばちゃん、ありがとう」

 少女は、手渡されたお菓子の袋を、胸に抱えて家に戻る。


「行ってきたよ」と、台所にいた母に告げ、「ありがとう」という母の声を背に、少女はそのまま階段を駆け上がる。


「どうだった?」もう一人の少女が、待ちわびていたかように聞く。


「うまく、騙せたわ――お姉ちゃん」と、北叟笑ほくそえむ。


 二人は、いつまでも笑い転げた。


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