紫桐兄妹の探偵奇譚/Mysterious detective story of SHITO brother and sister

長束直哉

第一奇譚:「双数は対偶にある/The dual is contraposition」

プロローグ

双数は対偶にある:プレフィス 1


      *


 彼女は長い間眠っていたような気がした。


 眼を覚ましたのはいいが、ひどく疲れているし頭痛もする。

 ぼんやりとした意識が、彼女の躰を包む。


 しばらく、そのままで覚醒を待つ。

 しかし、意識は、なかなか、はっきりとはしてこない。


 彼女は躰をゆっくりと起こし、あたりを見渡した。


 ――ここは、何処?


 朧気な記憶の断片は、時間の概念を失錯させ、後と前との関係性を不可分にする。


 彼女は朦朧としながらも部屋の中を見渡した。

 薄暗い部屋の中は、整然として物が置かれてある。

 見覚えのある部屋だ。


 やがて、模糊とした断片的な記憶が形を成す。

 どうやらここは、自宅の二階のようだ。


 彼女は思い出す。

 少しずつだが思い出す。


 締め切ったカーテンの隙間から、光が射し込んでいる。


 ――今、何時ごろだろう?


 彼女は、窓のカーテンを少しだけ開けた。


 その瞬間、眩しい光が、部屋の中に射し込む。

 一瞬眼を閉じる。


 埃が、射し込んだ光の中で浮遊する。

 窓から見える景色には見覚えがあるが、少し違和感がある。


 彼女は首を振り、もう一度部屋の中を見た。


 机の上の写真立てが、目に入った。

 中には、懐かしい情景が写っていた。

 幼いころ、妹と二人で一緒に写した写真だ。

 彼女は、それを凝乎と見つめた。


 妹……。


 その写真を見て、彼女は我に返った。


 ――妹は?


 彼女は、急いでその部屋から出ると階段を下り、一階のダイニングへと向かった。


 そして、キッチン……。


 妹の姿は何処にも見当たらない。

 妹は、一体何処に行ったのだろう?


 ――妹は?


 何処……?


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