第33話「まだ終わらない」
僕達はまた以前のように暮らしていた。
ミカ、ユカ、ヒトシはあっちとこっちの世界を行ったり来たりしていて、チャスタとシューヤもミカとユカにくっついてくる。
てかシューヤ、君もう姉ちゃんの護衛隊長の事忘れてるだろ?
ミルちゃんは祖母のハルフェさんと向こうの世界で暮らし始めた。
そしてたまに二人でじいちゃんのとこに行ってるそうだ。
あれ、そういえばどうやって?
と思ったらミルちゃんがいつの間にか時空転移呪文を使えるようになっていた。
凄えなおい、あれ誰でも使える訳じゃないのに。
しばらくして僕が「ユカちゃんは女王になるの?」って聞いたらまだ保留中、という事だった。
向こうの世界の人達は既にユカが生きていたと知っている。
キリカさんが有力者達に知らせた後、あっという間に世界中に広まったそうだ。
ミカやミルちゃんの事も一緒に。
だからもしユカが女王にならないのなら従妹で今は英雄視されているライアスさんとメルさんの娘ミルちゃんを、いや本来ならあちらの家系が王家だったはずだとミカを推す声もあるそうだ。
だが最後は本人の意志を尊重する、という事が全員一致の意見だった。
うん、その方がいいよ。
それとキリカさんは結局引き続き守護神をするそうだ。
その補佐という名目でユイさんやタケルさんもいる。
後日向こうに住み着いた鮫蔵と水の精霊リクさんに聞いたら
「夜な夜な神殿からキリカ様とユイ様の喘ぎ声が」とか。
おい、まさか三人で?
……爆発しろ初代神剣士。
しばらくしてイザヨイとミユキが僕達の世界にやってきて、それぞれの両親に十数年ぶりに再会した。
案内した僕と姉ちゃんは家族水入らずで、と部屋の外にいたが、嬉し泣きする声がこちら側まで聞こえて思わず貰い泣きしてしまった。
そして再会から半月後、皆さんは元の世界に帰っていった。
あ、帰る前にご家族で旅行に行ったそうだ。
後日写真見せてもらったらあのランドやお台場、浅草寺等で笑顔いっぱいで楽しそうにしてるところが写ってた。
本当によかったね。
そして六月のある日、僕と姉ちゃんは父さんと母さん、ばあちゃんと一緒にじいちゃんに会いに行った。
元の世界と同じ家の居間、そこで皆で話していた。
「隆生から聞いてはいたが、本当に……俺にもこんな未来は見えなかったぞ」
父さんは涙ぐみながら言った。
「ええ、まさかまた会えるなんて。うう」
ばあちゃんなんか顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
「ああ、私もまた皆に会えるとは思ってなかったよ」
じいちゃんも涙ぐみながら言った。
「さ、今日は家族でお祝いしましょ。お料理もたくさん持ってきたし」
母さんがそう言って台所へ食器を取りに行った。
「ふふ、再会のだけじゃないな。今日は」
「あ、じいちゃん覚えててくれたんだね。有給取って来た甲斐があったよ」
「誰が忘れるものか。隆生は今日で二十七歳だったな」
「うん、今日六月一日でね」
そう、今日は僕の誕生日でもある。
「そうか……あれからもう二十七年か。早いもんだな」
父さんはしんみりとしていた。
「ああそうだな。そして優美子ももう三十か。まだ結婚せんのか?」
じいちゃんが姉ちゃんに心配そうに言うと
「俺はまだ結婚なんてしないぞ。それに相手がいないし」
姉ちゃんはしかめっ面でそう言った。
「そうか。まあ……私は口出ししないからな」
ん、最後の方が聞き取れなかったが何て言ったの?
「いや、何でもない。さ、長年の夢が叶う時が来たんだ。親子三代で飲もう」
「ただ飲みたいだけだろうが、ったく」
父さんが呆れながら言うと
「隆一、お前忘れてるのか?」
じいちゃんが父さんを睨みつけた。
「……すみませんごめんなさい」
父さんは凄く怯えていた。
ああ、父さんもじいちゃんに記憶操作されたことあるんだ。
「それじゃあ隆生の誕生日と皆との再会を祝して、乾杯!」
じいちゃんが音頭をとって始まり、その日は夜遅くまで飲んで食べながら思い出話に花を咲かせた。
うん、今日は楽しんでね~。
あのね、悪いんだけどちょっと頼みたい事ができたんだよ。
これって隆生達とタケル達、そして……ならなんとかできると思うんだよね〜、だからお願いね~。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます