第21話「不思議な縁」

 そしてその日はイザヨイとミユキの家に、てか見えてた塔が二人の家だった。


「この塔って天界に繋がっているって伝説があったんだよ。でも実際てっぺんまで昇っても何もなかったよ」

 イザヨイがそんな事を言った。


「へ、へえ。しかしこの塔、スカイツリーくらい高いね」

「そのスカイツリーってのがどのくらいか知らないけどさ、塔の高さは1000mあるよ。そうだよな?」

「うん。そうよ」

 イザヨイの問いにミユキが答えた。

「そんなにかよ。しかしミユキちゃんって何でも知ってるんだね」

「はい。私はありとあらゆる神様の神託が聞けますから~」

 ミユキはやや得意気に言った。

「そうね。神託を受けられる者は歴史上で見れば結構いるけど、多くの神々のとなると出来るのはここにいるかつてのキリカ、ミユキ、そしてタケルの姉シオリだけね」

 アマテラス様がそう言ったが、あれ?


「あの、シオリさんって聖巫女じゃないですよね? それにユリアさんは?」

「シオリは本来なら聖巫女でもおかしくないくらいの力を持ってるからできるのよ。ユリアは今は無理だけど、いずれはできるようになるでしょうね」

「そうなんだ……」


「あの~。それならこの塔の伝説だって神様に聞けばよかったんじゃ?」

 ミカがそう言うと


「いや、伝説って自分で調べたほうが面白いだろ」

 イザヨイは笑いながらそう答えた。


「……あの、ミユキさんって昔からイザヨイさんと一緒にいるんですか?」

 ミカが今度はミユキに尋ねた。


「うん。両親が仲間同士だったので生まれた時からね。あと私達偶然にも同じ日に生まれてるしね~」


「へえ~。あ、ご両親は今どうされて」

「それがね、私達は三歳の時に両親と生き別れたの。その後私達は大魔導師様に拾われて育てられたの」

「え、あ、あの」

 ミカはしまった、と慌てていた。

「気にしなくていいわ。両親とはいつか会える、それだけはわかるの」

 

「ねえ、ご両親がどこにいるのかは見えないの?」

 僕がミユキに尋ねると

「うーん、何故か見えないんですよ。もしかしたら別世界にいるのかも?」

「私も見えないからたぶんそうよね。そこの守護神が両親の存在を知ってれば教えてくれるんだろけど」

 キリカさんはそう言った。

「ねえ、それならアマテラス様に見てもらったら?」

 ランさんがそう言ったが、それいいの?

「あまり手を出すのはねえ。でもまあいいわ。見てあげる」

 アマテラス様は目を瞑って意識を集中し始めた。


 しばらくして 

「わかったわよ。イザヨイとミユキの両親はね……もう、こんな事ってあるのね、まったく」

「へ? あの、何か?」

「四人ともちゃんと生きてるわ。そして隆生達の世界に、というか隆生の実家の近所にいるわよ」

「なんだってええ!? いったい誰だよ!?」


「あ、もしかしてあの人達か?」

 姉ちゃんが手をポンと叩きながらそう言った。


「え、心当りあるの?」

「ああ。ほら、近所のアパートに住んでて毎年父さんの命日、と言っても別世界で生きてるがな。まあ、とにかく必ずお参りに来る二組の外国人夫婦がいるだろ」

「あ、あの人達か。うん。いつもたくさんのお供え物持って来てくれるよね」

「ああ。これは後で兄さんに聞いたんだが、事情は知らないが行く宛がないと嘆いていたあの人達を父さんが面倒みていたらしいんだ。住む所や仕事も世話してな。当時病気がちだったのにそれでも……その事を知ったあの人達はずっと恩を忘れないように、命日には必ずお参りしたいと頼んできたんだと」

「そうだったんだ。あ、じいちゃんならあの人達が異世界から来たってのはわかってたよね」

「そうだな。そしてあの人達には生き別れた子供がいるらしく、年齢も聞いた限りイザヨイ君とミユキちゃんと同じだ」

「え、父さんと母さんってそっちの世界にいるの!?」

 イザヨイが身を乗り出してきた。


「ああ。と言っても俺は最近会ってないがな。隆生は知ってるか?」

「うん。この前たまたま会ったけどさ、皆さん元気にしてたよ」


「そうなんだ……よかった」

「イザヨイ、終わったら迎えに行こうね!」

 イザヨイとミユキは涙ぐんでいた。


「それって試練が終わったらって事?」

 僕が言うとイザヨイは

「試練もだけど世界の核の事もあるし、全部片付いたらにするよ」

「あ、そういう事ね」

「そうですよ~、……あの隆生さん、ちょっと」


 ミユキにちょっと離れた場所に誘導された後

「ごめんなさい、私にもどうすればいいかわからないんです」

 そう言って頭を下げて来た。


「え? ああ。君も知ってるんだね」

「はい。実は創造大神様にお伺いしたんです」

「え?」

「ちょっと、それどう言う事?」

 アマテラス様が近いてきて同じく小声で聞いてきた。


「あ、私って創造大神様と話せるんですよ」

「な、なんですって!? そんな事私にもできないのに!」

 アマテラス様は凄く驚いていた。てか最高神様でもできないの?

「それはですね、創造大神様は今を生きる者の中から何人かを無作為に選び、ご自分と話せる力を与えているそうなんです。そしてその人達から話を聞いて全ての世界、全ての宇宙をいろいろな角度から見ているそうなんです」

「そ、そうだったの。そしてその一人が偶然にもミユキだったと」

「はい。聞いた所によりますと、隆生さんは創造大神様ですら予想もつかない不思議な縁があるそうです。それがもしかしたら隆生さんを……だからご自分は手を出さず見守ると」

「そうなのね……たしかに隆生は私にも出来ない事をしているものね」

 そんな事ないと思うが。

「あるわよ。まあいいわ、それなら最後まで諦めなければあるいは……ごめんなさい、私ができればさっさとしてあげるのに」

 アマテラス様が謝ってきたが

「いいですよ。まだ望みがあるならそれに賭けてみますよ」



 

 そして次の日の朝、塔の前。 


「じゃあ始めようか。隆生さん、遠慮はいらないからね」

「うん。てかそれ僕の台詞だよ」

 僕達はそれぞれ大怪我しないように、とキリカさんから渡された模擬刀を構えた。

「審判はセイショウ、解説は僕がするね~」

 ヒトシがそう言った。


「さてと、では……始め!」

 

 神剣士イザヨイ対仁志隆生の戦いが始まった。

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