第13話「爆乳魔女」

 そして朝食後。

 僕達はオニワカさんや町の人達に見送られながら次の場所へと転移していった。




「さ、着きましたよ。ここは大地を司る国、グノーメですよ」

 キリカさんが皆にそう言った。


 そこは地平線が見えるくらいの大草原だった。

「うわあ、凄いね」

「ああ、そうだな」

 僕と姉ちゃんはその壮大さに驚いた。

「本当に綺麗……あの、ここって戦乱がなかったんですか?」

 ミカがキリカさんに尋ねると

「いえ、あったわよ。だからこうなってるのよ」

「へ? どういう事ですか?」

「ここって元はグノーメの首都だったのよ」

 キリカさんは暗い表情でそう言った。

「え、まさか魔王が?」

「違うわよ。魔王が倒された後に人間同士が争い、ついには超兵器が使われ……全てが消えたのよ」


 全員沈黙していた。


 そんな凄まじい兵器があったのか、この世界には。

 

「でもいずれは生き残った者達がここを開拓し、新たな町や国ができるでしょうね」

「ええ、そう願いたいですね。あの、ところで宝玉はどこに?」

「それは……あれ? どこ行っちゃったのかしら、あの子は?」

 キリカさんは辺りを見渡していた。

「あの、ここに誰かいるんですか?」

「ええ。あ、彼女と最初に話すのはセリス、お願いね」

 キリカさんはセリスの方を見て言った。

「うん、いいよお姉ちゃん」

「あ、私の事お姉ちゃんって呼んでくれるのね。おばさんって言われたらどうしようかと思ったわ」

 まあ、この人見た目は高校生くらいだしね。

 だが実年齢は少なくとも三千歳だからおばさんって言うのも生ぬるいが

「隆生、あの世に行きたいの?」

 キリカさんがドス黒い気を放ちながらそう言ってきた。

 ごめんなさい勘弁してください。


「ところでキリカ。ここにいる人ってあたし達が知ってる人?」

 ランさんが尋ねた。

「いいえ、隆生や優美子は彼女の事を知ってるけど、彼女自身はセリスしか知らないはずよ」

「へ? あ、もしかしてセリスくんが住んでる世界の誰かなの?」

「そうよ。彼女はセリスの友達よ」


「へえ、誰かな? セイラちゃんは未来の奥さん、エミリーさんは未来の義母、サキちゃんは双子の姉だから……って友達だと該当者一人しかいないじゃないですか!」

 誰だか気づいて思わず大声で突っ込んだ。

「ええ。その一人、イリアがここにいるのよ」


 イリアとはセリスの仲間、優者を守護する四人のうちの一人である。

 彼女は魔法使いでその潜在能力は高い。

 だがセリスと旅をしていた当時はまだ見習いだったので魔法力を制御しきれず、暴発して全員真っ黒焦げになった事もある。

 そして彼女は……まあ、そっちは大丈夫だよな?

 アレはセイラ限定だよな?


「ねえ皆~、ここに誰か寝てるよ~?」

 ミルちゃんが皆に言ってきた。

 彼女の足元にはたしかに誰かが寝てる、てかそれ倒れてんじゃねえのか!?

 

 僕達は駆け寄って大の字になって倒れているその人を見た。

 それはやや日焼けした肌で灰色のショートヘア、白いブラウスに黒のやたら短いスカートを履いた高校生くらいの女の子。

 うん、僕がイメージしてたイリアそのものだわ。

 胸は想像以上の大きさだが。

 こりゃもう爆乳魔女だわ。


「ねえお姉様、この乳女このまま永眠させようよ」

「そうね、そして暗黒神の生け贄にしましょ。ふふふ」

 ゴン!

 ゴン!

「おのれら何血迷ってんじゃ!」

「そうだよ~、ダメだよ~」

 ミルちゃんが笑いながら二人に言った……あれ?

「あの、ミルちゃんは何とも思わないの?」

「うん。ママが言ってたけど、あたしはもうすぐ大きくなるんだってさ~」

 ミルちゃんはケラケラ笑いながらそう言った。

 まあ、メルさんって見た感じ結構あったもんな。

「てか十歳位でそんなになるのか、エルフって?」

「エルフというより精霊女王の血でしょう、たぶん」

 セイショウさんがそう言った。

 ああ、精霊女王って僕が思ってるとおりなら隠れ巨乳だもんな。


「ねえ、起きてよ。イリアお姉ちゃん」

 いつの間にかセリスがイリアを起こそうとしていた。

 何気に彼女の胸揉んでた気もするが、目の錯覚だと思っとこう。

「……う、ん? あれ、セリス?」

 あ、イリアが目を覚ました。

「うん。ボクだよ」

「そう……ふああ、やっと来てくれたのねー、あたし待ちくたびれて寝ちゃったわー」

 イリアは起き上がるとあくびしながら大きく伸びをした。

 しかしどれだけ待ってたんだ?

「ねえ、お姉ちゃんは何でここにいるの?」

「それはねー、あたしあれから修行の旅に出たのは知ってるでしょー。その途中でお師匠様の元に戻ったらねー、この世界に行けって言われたのよー」

「何で?」

「それは行けばわかる、って言われてねー。あ、セリスが新しい友達と来るってのはここの守護神様から聞いてたわよ。あの人達がそうなんだねー?」

 イリアはそう言って僕達を指さした。

「そうだよ。皆ボクの友達だよ」

「ええ。初めましてイリアさん。僕は仁志隆生といいます、そして」

 全員の自己紹介が終わってから改めてイリアに尋ねた。

「えーとね、行けばわかる、って言われて師匠に時空転移魔法で飛ばされてここに来たらさー。大地から亡霊が出てきたのよねー。……気絶しそうになったわ」

 あ、イリアって幽霊苦手だったな、そういや。


「それでまあなんとか耐えてそいつの話を聞いたらさ、セリス達にこれを渡してくれって頼まれてねー」

 そう言ってイリアは大きな胸の谷間から黄色い宝玉を取り出したって、その胸は四◯元ポケットか?

「……おのれこのアマ見せつけやがって、ノラミミチカラノラモチシインラミシイノナスイカイチスニキチカラナキラツチニモチトナ」

「……クラノチトチノナクニミモランラスラトニノナラミイキチニトニモチトナ」

 ミカユカは血の涙を流して何か意味不明な呪文を唱えようとしていた。

「二人共やめろ。俺が後でこいつを神力で消滅させてやるから」

 よく見たら姉ちゃんも血の涙を流していた。

 てかあんたも大きさ気にしてたんか?

「あの、イリアさん。その亡霊っておれ達にあなたが考えた試練を出せとか言ってませんでした?」

 シューヤが目を逸らして顔を真っ赤にしながら尋ねた。

 あのさ、無理しなくていいから。

「言ってた。あたしとしてはタダであげたいんだけどさー、やらないと呪われそうだし、ごめんね」

 イリアは申し訳なさそうに言った。

「まあいいですよ。それでイリアさん、試練って何ですか?」

 僕が尋ねると

「あ、その前にさー、あたしの事は呼び捨てにしてよー。喋り方もタメ口でいいからさー」

「うん。それじゃイリア、試練って何すればいいの?」

「えっとね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る