第7話「たとえ何であってもあの人は」
翌日の朝、ハルフェさんの家
「皆さんありがとうございました。おかげで昨夜はミルや母とたくさん話せました」
「本当にありがとうございました。これからもミルの事、よろしくお願いします」
ライアスさんとメルさんが僕達に礼を言ってきた。
「ええわかりました。任せてください」
「あ、ライアス……いえ、叔父様」
ユカがライアスさんに話しかけた。
「王女様、いやユカ。まだ俺達を死なせたとか思ってるならな、もう気にしなくていいんだぞ。それよりミルと仲良くしてやってくれな」
ライアスさんはそう言ってユカの頭を撫でた。
「うん。わたしミルちゃんとBL同人サークル作って頑張るから」
ライアスさんは無言で胃を押さえてた。
「パパ、ママ……もう行っちゃうんだね」
ミルちゃんが寂しそうにしてると
「ミル、本当はおおっぴらに言っちゃいけないんだけどね、守護神サオリに頼めば二人が再び生まれ変わるまでは会えるわよ」
アマテラス様がそう言った。
「え?」
「でも毎日という訳にはいかないけどね。これでいい?」
「……うん!」
ミルちゃんは元気よく頷いた。
「では、皆さんお元気で」
「母さん、まだこっちに来ないでくれよな」
「わかってるわよ。ミルちゃんが立派なBL作家になるまでは死なないわよ」
それを聞いたライアスさんはまた無言で胃を押さえてた。
南無……。
そして二人の姿が消えた。
「行っちゃったね。さて、僕達もそろそろ」
「ああ。そうだ、ミルちゃんはどうする? ここでおばあさんと待っていてもいいんだぞ?」
姉ちゃんがミルちゃんに尋ねたが
「あたし皆と行くよ。おばあちゃん、いいでしょ?」
「いいわよ。ミルちゃんの思う通りにしなさい」
「ありがと。でね、終わったらここに帰ってくるね」
「ええ。待ってるからね。ああそうだ。勝隆さんと仰るのでしたね。ミルちゃんを育ててくれた方は。いずれお礼に伺いたいので」
「ええ。これが終わったらご案内しますよ」
そして僕達はキリカさんの転移術で次の場所へ向かった。
「はい、次の場所に着きましたよ」
キリカさんが皆に言った。
「えと、ここは?」
「世界の南方大陸にある炎を司る国サラマンドル。ここはその首都よ」
首都……ってかなり荒れていてあちこちで建物を修理してるが。
「あ、首都って言ったけど盟主国、って言った方が正解かもね」
「盟主国?」
「サラマンドルは一つの国じゃなくてね、多くの小国家が集まってる連合国なのよ。その盟主国がサラマンドル。そして連合国の名前もそれにしてるのよ」
「なるほど……」
「キリカ様、この連合国の王家も全て滅んだんですか?」
シューヤがキリカさんに尋ねると
「正確に言うと生き残ってる者もいるけど、何代も前に王族から抜けた人の子孫なのよ」
「そうですか。でも国民はその人に頼まなかったんですか? 一応は王家の血筋なんだし」
「いいえ。だってサラマンドルの民は彼の存在を知らないんだから」
「え、何故ですか?」
「彼は今この世界にいないし、彼の実家は既に滅んだものと思われてるからよ」
ん? もしかして
「隆生、イザヨイは違うわよ」
キリカさんは僕の方を見て言った。
「心読んで先に言わないでください。じゃあ誰ですか?」
「それはね……隆生ならわかるわよね。彼が住んでいた小国はね、王が馬鹿みたいに贅沢三昧、馬鹿みたいに見栄張って国家予算以上の事業や祭典をいくつもやったけど赤字続きで、とうとう破綻したのよ」
はい? それって。
「でね、その小国は無法地帯になり盗賊や暴徒が好き放題で多くの者が……盟主サラマンドル王が時間をかけてそれを収めたけど、その時に魔王が攻めてきたので振り出しに戻ったわ。今はなんとか落ち着いてるけどね」
「あの、その人って貴族であったご両親を野盗に殺されて攫われた後、妹さんと別々に売られた人?」
「そうよ。その人」
……おい。
「あの、オイラよく似た話聞いたことあるんだけど」
チャスタがおそるおそる言ってきた。
そうか、チャスタなら知ってても不思議じゃないよな。
「よく似たじゃなくてそのものよ。チャスタ、彼とはあなたのお養父さんの事なんだから」
「何だってぇー!?」
それを聞いてチャスタだけじゃなくミカユカも姉ちゃんもルーも叫んだ。
「え、え、ドンタさんって王様だったの?」
ルーがまだ混乱しながら言った。
ドンタとは彼の別名である、というかこれ本名を縮めただけなんだが。
「王様じゃないわよ。その親戚って言った方がわかりやすいかしら?」
「あ、そうでした。でも偉い人だったんですよね?」
「ええ。でもそれは王様の親戚だからじゃないわよ。彼自身が立派な心の持ち主だからよ」
「うん、ドンタさんは王様じゃなくても偉い人だよね」
まあ、変態なところ除けばね。
しかし元貴族だって設定はあったがそこまで考えてなかったわ。
「あ、あの、父ちゃんにこの事言ったの?」
チャスタが尋ねたが
「いいえ。彼もその妹もあっちの世界で多くの人達の支えになってるもの。今更こっちに来て王様になってなんて言えないわよ」
「そうなんだ。もし父ちゃんが王様になったらどうしようかと思った」
「チャスタ、たとえ何であってもあの人はチャスタのお父様よ」
ミカが不安そうにしてるチャスタに言った。
「……うん。そうだよな、父ちゃんは父ちゃんだ」
「ところでこの国にある宝玉なんだけど、チャスタとミカ、ルーに任せていいかしら?」
キリカさんがそう言ってきた。
「わたし達が?」
「ええ。あなた達三人の力があれば余裕だと思うし」
「わたし達の力が……わかりました」
「よし、それじゃ行きましょ。二つ目の宝玉を持ってる人の所へ」
そう言われて僕達はとある場所へ移動した。
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