【Episode:18】 血の色をした悪魔 -Devil of the Crimson Like Blood-
血に飢えた獣
ジークが、『
残された二人は、ジョシュアをエノシガイオスで休ませながら、悲しみに沈んでいた。
ジークという名の戦友を――長年プラセンタでともに生きてきた、家族のような間柄だった彼を失った悲しみは、そう簡単に拭い切れるものではなかった。
「ジーク……」
ノアが嘆くようにその名を呟いた。
「ノア、今は、作戦を成功させることだけを考えよう」
ハルキが気丈に言う。
悲しむのは後からでもできる。
その前に、後を託された自分達には、やるべきことが残っている。
ジークだけじゃない。
その前に散っていった蒼雪。
プラセンタの皆。
皆の想いを無駄にしないためにも。
「……うん」
ノアもそれを理解しているため、弱々しくも頷く。
「よし、後は、俺達でどうにかするぞ」
「だけど、どうやって?
「ガイオスの主砲があれば、どうにかなる。敵は戦況が不利になったと見て後退したんだ。今の内に、敵の要塞に近づいて叩くぞ」
ハルキが言った時だった。
レーダーが、新たな敵影をキャッチした。
コクピットに、その映像が結ばれる。
「……なるほど、あいつらが退いていったのは、真打ちに任せろってことだったのか……」
とその映像に映る赤い機体を睨みつけるハルキ。
「あれが、最強のロボット兵器、ニース……」
ノアがその名を口にする。
ニース。
『
真紅に塗られた躯体からは、左右に三枚ずつの翼が生えている。
その額と片腕、片足の三カ所には、それぞれ、『Ⅵ』という文字が刻まれている。今は、その片足の一つが、赤く発光している。
胴体には、ラテン語で、『
そのコクピットに座るのは、地上にはただ一人の存在となったシオン・アルヴァレズ以外にいない。
「なんて禍々しい赤……まるで、血で塗られたみたい……」
ノアが、気圧されたように。
「あいつは、これまでに殺した皆の血を吸ってきたんだよ」
血に飢えた獣。
ニースも、それに乗るシオンも。
『
だが、そうなる前に、死をもって、その動きを止める。
死よりも重い罪を背負っているあいつだが、せめてもの贖罪とさせるために。
「だけど、それもここでおしまいだ。地獄に堕ちて、悪魔達にでも詫びるんだな」
ハルキが、吐き捨てるように言う。
と--。
通信に雑音がまぎれたかと思うと、軽やかなピアノの旋律が流れ出した。
「これは……ショパンの……『子犬のワルツ』……?」
ノアが、呆気にとられたように。
「なめやがって、俺達とダンスでも踊ろうってのかよ!」
ハルキは、怒りをあらわに言い放つと、
「ジークの死を無駄にするわけにはいかない。やるぞ、ノア!」
すべてに決着をつける戦いの火蓋が、今まさに切られた。
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