第32話 伝わらなくて…

 想い、伝わらなくて…。

 愛を確かめるために、みんなはどうしてるのだろう。

 抱き合って繋がっても、それを確かめられるのだろうか。

 想いは、どうやれば伝わるのだろう…伝わらなくて…それは…ただツラいだけで…僕は今日も想いを綴る。


「メガネ無くしたみたいでね、買いに行きたいんだけど『N』に選んでほしいんだ」

 彼女は快諾してくれる。

 他人のなにかを選んだりするのは好きだと思う。

 僕は、彼女の気に入ったメガネを買いたいのだ。

 少しでも、気に入って貰えるように身なりを整えたい。

 それに、恋人のようじゃないだろうか…、そんな普通のことをしてみたい…。


 そう…普通の事をしてみたい。


 普通を願う、それは自分が、それ以下だと認識しているから。

 不幸だとは思わない、思ってない。

 すこしだけ…憧れてるだけ、普通の恋人関係というものに…。


 付き合った人数だけは、きっと多い方だと思う。

 でも、どこか後ろめたい関係も多かった。

 だから…普通に街を歩いたり、買い物したり、そんな関係に憧れる。


 彼女は仕事のせいで、他人の目を気にする。

 実際、掲示板にも書かれるのだ…なにが面白いのかと腹がたつのだが…。

 そんなことを気にせずに、手を繋いでみたい…。

 中学生のようなことだが…そんなことに憧れる。


 届かぬ声は…願いは…消えることなく募るだけ…。


 一緒にいると、普通の娘なんだ。

 少し変わった行動も…考え方も…個性のレベル、普通の娘…。

 一般常識が少し欠落しているだけ…普通に生活すれば、すぐに馴染むよ。


 風俗嬢との恋愛に憧れたわけじゃない…。

 ただ…恋をしただけ。

 風俗嬢にじゃない…『N』という娘に恋をしただけ…。


 だから…僕に後ろめたさは感じないでほしい…。

 僕は嫉妬もするし…特別を欲しがると思う。


 いつか…そんな想いを口に出しあえるようになりたい…。

 そしたら、少しだけ…今より少しだけ、近づけているはずだから…。


 僕はまだ…『N』との幸せのカタチを描けずにいる。

 どうなれば、幸せだと思えるのか…そんなことも視えない場所にいる。


 そう思えることが…今の僕の愛だと伝えたい…。

 心なければ、悩みもしないのだから、特に僕は…他人に興味を持たないのだから。

 そんな僕が、こんなにも想う、彼女のことだけを想う。

 僕の幸せも…切なさも…彼女に起因している。


 そんな僕の想いを伝えたい…願わくば、彼女の気持ちも受け止めたい。

 もしも…彼女の気持ちが僕に向いているのなら…。


 伝わらない…伝わらない…と嘆くのは…知ろうとしないせいかもしれない。

 知りたい…知りたい…と思うのは…きっと僕が彼女を見ていないから。


 だから逢いたい…伝えるために…知るために…。

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