第21話 想うだけなら…

 彼女のことを想うだけなら…迷惑にはならない。

 なるのかな…。

 なぜ…こんな恋ばかりするのだろう…。

 ツライだけの日々を望むように…生きてしまう…。

 もしかしたら…『死』を望んでいるからかもしれない。

 死を選びたいから…僕は絶望に身を置きたがるのかもしれない。


 失恋がツライと他人は言う…。

 恋をしたから、失えるのだ。

 恋をしなければ失えないのだから…。

 僕は聞きたい。

 それでも恋は楽しかったんじゃないのか?

 それを失ったから…ツライんだろ。


 僕は…恋をしている。

 彼女に恋をしている。


 恋は苦しく…切ない…ソレを癒すものがない…。

 癒すものは…いつも誰かの腕の中…そう思うと、なぜ恋をしているのか解らなくなる。

 恋とはそういうものかもしれない。

 報われない…救われない想いを恋というのかもしれない。


 じゃあ恋愛ってなんだ…。

 恋が報われないのなら…それに注いだ想いを愛と呼ぶのだろうか。

 楽しいわけがないじゃないか…。


 それを失えたのだ…なぜツライの?


 解放されたんじゃないのか…。

 恋をしても…それを失っても…ツライのならば…なぜ好きになるのだろう…。


 彼女は、きっと他人よりも遥かに好意を向けられるだろう。

 掲示板の書き込みも、言ってみれば嫉妬だ。


 僕の好意も数あるうちの、ひとつに過ぎない…。

 幾度か重なったのは運命なんかじゃない。

 ただの偶然だ。


 僕は…偶然を運命としたくなる。

 それがいかに身の丈を知らない好意だったとしても…。

 真実…それは…儚い願い…もしくは夢だ。


 選べる好意の中で彼女が僕を選ぶ理由などない。


 時間など裂くわけがないのだ。

 だから期待してはいけない。


 きっと彼女は『金』と『心』を分けて考えている。

 だから、僕に好意を持ってくれているとは思う反面、仕事を優先する彼女の行動も解る。


 それを悔やむのは、愚かなことなのだ。


 逆を考えれば、100Kmの移動をしながら毎日、なんらかの方法でお金を得ているのだ。

「日銭稼がないと…いつ収入が止まるか解らないから…」

 そんなことを言っていた。


 理解しなければならないのだ…。

 彼女のことが好きであるならば…。


 それは矛盾を孕んだ愛。


 愛が薄くなれば、彼女の仕事など気にならないのだろう…たまに無料でSEXできる見た目の良いだけの女として見てしまう。


 愛が深くなれば、彼女の仕事を飲み込めなくなるのだろう…彼女の気持ちを疑い続ける日々。


 僕は今、これ以上踏み込むのが怖いと感じている。


 愛してる…その言葉の重みを、僕は今、感じている。


 それは、絡みつき…締め付け…身体に喰い込むような心の…頭の…苦痛。

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