第19話 返せない…

 この小説は彼女も読んでいる。

 書く前に彼女に聞いたから…。


 病み過ぎ…。

 彼女の感想らしい。

 僕が考えているようなことはないから、安心して…とメールが届く。

 どう返していいか解らない…。


 解ってた…普通に逢えないことも…恋人になれないことも…。

 彼女が笑っていればそれで良かった…。


 なんでこんな気持ちになるのだろう…。

 寂しいのか…悔しいのか…空しいのか…それすら解らない。

 なにがこんな気持ちにさせるのか…それも解らない。


 クリスマスの予定を彼女がメールで送ってきた。

 家族と出かけて、夜は店にでるようだ。

「どうでもいい…」

 僕には関係ないこと…。

 そう思う自分がいる。

 その反面、逢いたいと思う自分もいる。


 きっと…自分が彼女の中にいることを確認したいだけなのかもしれない。

 選択にも入ってない…それを認識したから、こんな気持ちになるのだろう…。

 出勤表にあがってないから…固定客とだけ逢うのだろう。


 どっちが幸せなんだろう?

 金を払って、想いを寄せる嬢に逢えることが幸せ?

 それとも…逢えなくて、ごめんねと気遣われる方が幸せ?


 風俗嬢と付き合いたい…。

 なにを期待しているのだろう…。

 アナタに向けられている笑顔ですら有料なんだと気付いてないだけ…。


 恋をする夢を見ている…それが一番、幸せなこと。


 夢が現実になった途端に…幸せは訪れない。


「メール返ってこない気がするけど、送りました」

 彼女がクリスマスの予定を送ってきた最後の一文。


 そう…返す気はない。

 たぶん…迷惑だから…。

 あるいは…返すなという遠回しの忠告かもしれない。

 いちいち返信する時間は無いということかもしれない。

 忙しい…予定もソレを悟れと言われてるような気がした。


 彼氏とでも過ごしていれば、なおさらだろう。


 呼ばれた時に…望むことをしてやればいい。

 出来る範囲で…。


 彼女の生活で、僕は蚊帳の外なのだろう。


 悲観した現実しか見えない…。

 見えなくなってしまった。


 メールが頻繁にくるときは店でヒマなとき…僕は話し相手のひとりだ。


 昨日、友人から明日(12月24日)ヒマなら会わないかと誘われた。

 僕は、彼女と逢うからいいよ、と断った。

 羨ましいよ、そんなことを言われたが…僕は…そんなことない…ツライだけだよ…と返した。

 友人は何を言ってるんだろうと思っただろう。


 事実、僕は彼女とは逢わない。

 ただ…時間を持て余すだけだ…。


 他の嬢でも呼んで、ホテルで過ごしてもいい…。

 そうも思うが…なぜだろう…他の嬢を選ぶ気にもなれない…。

 誰でもいい…そう思いながら…僕は彼女しか求めてない。


 だから…ツライんだろう…。

 他の嬢など抱いても、きっと…。

 抱いても…抱いても…きっと空しいだけだと知っているから…。


 欲しいモノは…今日も別の誰かのところにあるのだから…。

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