第17話 ココロガナケレバ

『心』が無ければ…。

 どんなにいいだろう…。

『愛』に心が無ければ…好意を『受』けるだけでいいのかもしれない。

『恋』に心が無ければ…『亦』、それでも繋がることはできるのだろう。


 心なんて無くても…いっそ無い方が上手くいくような気がする。

 なんで…僕には心があるのだろう…。

 持て余すだけで…なんのメリットもない…。


 なんでツライの?

 好きだから…ツライの?

 本当に…そうなのだろうか…。


 好きだから、なにがツラいのだろう。

 それが答えられない…。


 僕は彼女とクリスマスを過ごしたことがない。

 だからといって哀しいとは思わない。

 クリスマスは大抵、一人だから…今までも。

 彼女に限らず…僕はそういう女生と付き合うことが多かった。

 一番解りやすいのは、人妻だ。

 疑われるから、イベント日には逢わない。


 僕は、彼女のことを風俗嬢として見ていない。

 見ようとしない。

 だから…好きでいられる。

 心を保てる…。

 でも、時々…彼女の仕事を嫌でも見なくてはならないこともある。

 そのたびに自覚するのだ。

「僕は一番ではない…」

 と………。

 悩むことはないのだ…。

 獲るべきところで確実に獲りにいく…。

 チェスと同じ…。

 盤上で思考し、カリギュレーション通りに進めるだけ…。

 ポーカーと同じ…。

 自分のカードより…相手のカードを推測し、チップを釣り上げる、あるいはゲームを降りる。


 すべては最後に金を得るため…その一手、あるいは、そのゲームが存在するのだ。

 捨てるという選択もある。


 得意なはずだろ?

 そういうのは…心と頭を切り離すのは、子供の頃から得意だったはず。

 それだけのこと…。

 ただ…頭で考えればいいだけのこと…。


 願うな…望むな…自惚れるな…。


 鏡の自分に言い聞かせる。

「ほらっ…オマエはそんなに醜いじゃないか…」

 部屋に籠っているのが僕らしいじゃないか…。

 毎年そうだろ?

 今年もそうさ。


 彼女といたければ…10万も用意すればいい。

 それができないなら…。


「金で彼女を抱きたくない」

 本音だ。

「金が無ければ逢うことすらできない」

 現実だ。


 これが現実…。

 普通の恋愛って…どんなだったかな…。

 ふと考える…。

 そんなこと…何年も縁が無かった。

 日陰の恋愛。

 いつから、そうなった…。

 僕は…待つだけの日々に嫌気が差して不倫を止めたはずなのに…。

 また…待つだけの日々に、その身を置く…。


 彼女の選択肢に…今年も僕はいない…。

 去年もいない…。


 なにがツラいの?


 そこに僕がいないこと…。

 彼女の選択肢のひとつにもなれない自分がツライだけ…。

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