既に旧作の部類に入るかもしれませんが、あらすじやレビューに大いに興味を惹かれ、遅蒔きながら拝読いたしました。
キャラクターものでありながら、ミステリ部分がとてもしっかりしているので、どちらかに嗜好が偏っていてもすんなり入り込めるのが素晴らしい。
全部で四つの事件が扱われ、いずれもバラエティに富んだ興味深い内容ですが、白眉はやはり鬼無島でしょうか。
伝説に絡め取られた孤島……血塗られた因果に切り込むは未曾有のトランスジェンダー探偵! 金田一だかなんだが知らないけど、さっさと事件解決するわよ! オネエの名にかけて!
魅力的なキャラに、きっちり組み込まれたミステリ要素。硬派なミステリ読みにもオススメです。
キャラミステリの基本は、ホームズの時代にすでに確立されている。個性的な名探偵と常識人の語り手が絡んで様々な事件を解決する――と。つまり探偵役のキャラ立ちが重要。
近年のライトミステリでは、ただ奇想天外な探偵役ではダメ。奇人変人探偵では、古すぎる。現代日本の読者層に共感を持ってもらえるキャラ造形が重要になる。
本作はそこがオネエ探偵という。男も女も感じさせないオネエキャラは嫌われにくいので、バラエティでも普通に愛されている。まさにライトミステリ向き。いいとこ目をつけたなと。
繰り出される事件群も、最初の他愛ないものから次第にミステリ味が強まる構成。要は「キャラにつられて読み始めた」初級者を、うまくミステリ泥沼wに引きずり込む策士の構え。
個人的には、毎回事件解決後、語り手の女の子をうまく救ってあげる優しいエピソードが好き。それはオネエ探偵の優しさであると同時に、作者のキャラ愛なわけです。