百六振目 いろんな刀にいろんな刀屋さん
どんな刀剣が良いのか。
結局それは、各人それぞれ考えがあるので好きに買えば良いと思います。古刀、新刀、新々刀、現代刀、それぞれに美があって味がありますので。
もちろん偽銘でも良くて、日本刀っぽい形状さえしていれば構わないといった考えもあります。それであれば適当にオークションで買えばよろしく、本物の十分の一程度の値段ですから飾るぶんには充分かと。
しかしそうではなく、「どうせなら本物が欲しい」とか「本格的でなくても多少は楽しみたい」とか「一本ぐらいまともな日本刀があっても良いかも」といった考えであるのなら、やっぱり買う店を選ばないと駄目です。
オークションばかりケチをつけていますが、実際問題として実店舗でも止めた方が良い店はあります。
なお、不思議な事に……そういった店に限ってネット上では文句を付けられず賞賛され、真面目な店ばかり批判されケチをつけられています。ほんと不思議(棒)。
どこが良くて、どこが悪くて、あそこは酷い、あそこはヤバイと言いたいところですが、言っても意味が無いですしネットの匿名掲示板レベルに信憑性がなくなってしまう。
なので実店舗名はあげられませんが、こんな店もありますという事で。
1)怪しい店
そこで見かけたのは、思わず驚くような著名(まだ販売中のはずなので名前は出しませんが、誰でも知るような)刀です。
お値段は「お問い合わせ下さい」とありまして、立派な拵えもあり如何にも名品……ですが、どうにも見る限り怪しい。
こんな刃文だったか形だったか、ありえないとは言えないものの腑に落ちない。
やはり偽物だろうと思ったものの、日刀保鑑定書付きと書いてある。それなら本物かと思って鑑定書を見せて貰えば特別貴重刀剣で昭和45年発行……。
(余談ここから)
日刀保旧鑑定書の貴重刀剣・特別貴重刀剣は、過去に同じ組織が発行した鑑定書ですが、連続性や関連性のない別鑑定書になります。この鑑定書があろうと新鑑定書は最初から取り直す必要がありまして……そこで全く違う鑑定結果が出るのは、よくある話。
特に昭和40年代に某鑑定士が滅茶苦茶な貴重刀剣類の鑑定書を乱発した事は有名な話。ですから、特別貴重刀剣の昭和40年代となれば、それだけで偽物と思ってよい。ただし、その鑑定士だけが悪いのではなく、元からそうした土壌があるからこその問題であるため、全般に信用がなく旧鑑定書が改められたという事です。
というわけで貴重刀剣・特別貴重刀剣の信用度は極めて低い。刀剣店の中には、その鑑定書付きは相手にしない店もあります。
(余談ここまで)
そんな事を、刀を扱う店が知らないはずがない。
保存刀剣申請は簡単で安価なため、ちょっとした手間で誰もが本物と安心して買でる。それなのに信用出来ない鑑定書の、さらに信用出来ない年代の鑑定書のまま売るのは何故なのか……お後がよろしいようで。
2)うさん臭い店
堂々と偽銘が売られていました。
もちろん偽銘ですとは書いてありません。しかし銘部分が削られ改竄された状態である事は画像でも分かります。そもそも値段設定からして怪しいわけで……騙される方が悪いレベルの状態。
でも、少しして売れていました……誰が買ったのやら。偽物と分かって買っていれば問題ないですが。
その店のHPを見ますと、「伝説の大妖刀○○!」「刀剣○舞で有名な○○」「とっても貴重な○○」「唯一稀有な○○在銘刀」「伝説の刀鍛冶○○の在銘刀か」などと、虚仮威し的な売り口上が目立ちます。
さらに説明をみていくと、どうにもフザケた説明で「銘は違いますが○○と思って下さい」「本物だったら良いなと期待します」、最後に小さく「希望銘」などなど。どうにも酷い。
※希望銘というのは、そうだったら良いなというニュアンスの銘という事です。
3)せこい店
仮の名前で「貞宗(仮)」としますが、そんな目を惹くような著名刀が売られ、値段はそこそこ安め。お買い得かと思いきや未鑑定品。
つまり自店の鑑定で「貞宗(仮)」としている。
刀剣店で未鑑定品を売る事は当然ですがあります。そうした場合は自店での鑑定として売りに出しまして、安心できる店であれば「銘保証」や「鑑定保証」としています。
ただし!
銘保証とあっても、その意味をしっかり確認しないと安心できません。つまり「日刀保の鑑定結果が違う場合は全額返金での返品を受け付けます」と明記してあるかどうかです。
これが重要でして、「銘保証」とあっても返品や返金の記載がないとダメです。
その店は「銘保証」とあっても後の記載がないので聞いてみました
Q1:日刀保の鑑定結果が違ったらどうなりますか
A1:うちの店では鑑定に自信を持っています。間違いなく本物です
Q2:たまに違う鑑定が出ますけど
A2:うちの店では鑑定に自信を持っています。間違いなく本物です
といった感じで、絶対に返品や返金については口にしてくれない。
その店の場合は「その店だけでの銘保証」というもので、他の店では通用しない銘保証です。その店だけで売り買いすればマシなので、まだ良心的……かな? まあ他人に見せて、「貞宗(笑)」という扱いになるやもしれませんが。
なお、実を言えばその店を以前に利用した(しかもネット上で)ことがあり、説明では一言も触れられなかった埋め金、ふくれがあって酷い目に。あとは重ねを厚めに表示していたりとまあ、何かとやる事がセコイ。
実店舗があるからと、必ずしも安心出来ないのが恐いところです。
買う時は日本人的な曖昧さは残さず、きちっと確認しておいた方がよろしいかと。
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