九十三振目 初めての刀剣を選ぶなら

 初めて選ぶ刀剣はどんなものが良いのか。

 どこで買うかといった議論の前に、まずは最初にどんな刀剣を選ぶと良いかといった内容です。

 対象は古刀で個人の感想意見が多分に含まれた内容ですので、あしからず。


1)形状

 最初に選ぶのは「刀」です。

 次点は「脇差し」で、最初に「短刀」はよろしからず。「太刀」は大抵高いので、あんまり最初には向かない。

 長い刀は見どころが沢山あり、上から下まで楽しめます。しかも、大半の人にとって日本刀のイメージは刀が焼き付いておりますので、やはり刀を手にすると満足感が大きいかと。

 脇差しも似たような感じですが、刀に比べやや物足りなさがある。ただし、大磨上無銘の脇差しなどは安い割りに、出来がよいものもあるので次点。

 短刀は玄人好み。慣れると短い中に見どころや美点がギュッと詰まっている事が分かりますが、最初はそれがわからない。なんとなく物足りなさを感じてしまうはずです。


2)刃文

 最初に選ぶ刃文は「丁子刃」系統です。

 直刃は不人気なため値段はやや安ですが、最初に買うには不適格。なぜなら、直刃の良さとは最初の頃は全く分かりません。そうなると地味でつまらなく面白みがないと感じてしまう。

 私も最初に入手したのは直刃ですが、どうしても観るにつけ「つまらなく寂しい」と思えてしまい、重要合格と同時に手放しました。今になると良さが分かり、あれは手放すべきではなかったと後悔する事しきりです。

 『刃文は丁子に始まり直刃に終わる』と言われるように、丁子刃を観て楽しむうち段々と地鉄に目が向きだすので、そうなったら直刃を買うと楽しめます。


3)銘

 最初に選ぶのは「無銘」です。

 無銘は安い割りに、その刀工や流派に極められるだけの特徴が顕著(つまり出来が良い)となります。在銘となれば、それだけで一定の値段にならざるを得なくなります。

 最初の頃に在銘を買うと、大抵偽銘に当たります。これは在銘は通常は高いわけで、つい無鑑定の安価な在銘に手を出し偽銘に引っかかるわけです(経験談)。

 無銘でも個銘極めと流派極めがありますが、これは予算見合いで。


4)鑑定ランクと予算

 保存の出来は玉石混じりのため、最初に買うのであれば特保を狙うべきです。

 もちろん保存でも良品はありますが、最初に買う時は興奮状態にありますし経験もないので何が良いのか分からない。

 特保であれば少なくとも保存より上です。

 しかし特保でもピンキリがあるので、ある程度の値段(お金をかければ良いわけではありませんが)少なくとも100万以上、130万から150万ぐらいがお勧め。

 ただし、そこはお財布との相談ですので、流派極めの60万特保で良いかも。


5)流派と時代

 まず平安~南北朝までは基本的に高く、古いほど高い傾向です。しかし室町期になると実用刀が増大するので安くなります。

 しかし日本刀の黄金期は鎌倉時代で後は低下していくのみ。狙うのであれば、南北朝付近から室町初期です。室町末期は……あんまりよろしくない。

 流派極めとしては、古三原・古宇多・古波平・中島来・延寿・小反り・大和志津・直江志津・当麻・千代鶴といった辺りがお手頃です。


6)まとめ

 以上から考えますと、流派無銘か応永備前か永正備前を狙うと良さげな感じ。しかし永正備前は出来が……なので、それは刀を見ながら判断でしょうか。

 特に流派で小反りは備前の特長をある程度備え、1)から5)の特徴を概ねクリアしているので最初に買うならお勧めかと。

 とりあえず、その辺りの備前の値動きであれば次のような雰囲気。

 小反り極め130万、応永備前康光の脇差110万、永正備前清光の刀130万……この辺りは気にしていない範疇なので、あまり値動きは知らない。


 しかし、これに拘らず……結局は自分の好みで買えばいいかと。

 ゲームで人気の刀でもいいし、時代劇で憧れた刀でもいいし、自分の好きな時代の方でもいいし、縁のある国や刀工の刀でもいい。

 急に飛びついてはいけませんが、しかしやはり良い出物があれば直ぐに買わねば売れてしまう。刀との出会いはタイミングなので難しい。

 迷ったら買わない、欲しいと思って納得したら迷わず買う。

 夜に買おうと思ったら、良く朝に再度考えてから買う。

 そんな気持ちが大事かと。


7)その他参考

 五箇伝の中で買うなら、どれがお勧めかという点です。

『山城伝』

 刃文より地鉄を楽しむため、見る眼が育っていないと面白くない。また品が少なく全体的に高め。刃文よりは地鉄が楽しめるようになったらお勧め。

 全体的に値段が高い。

『大和伝』

 やはり刃文より地鉄を楽しむところ。基本的にほぼ無銘で、値段はそこそこ。しかし全体として地味な雰囲気があり、最初はあまり楽しめない。

 全体的に値段は多少安い

『備前伝』

 お勧めですが時代による。鎌倉中期から南北朝までは刃文も楽しめるが高い。応永備前辺りから少し物足りなくなり、永正以降の末備前ともなれば物足りない。

 値段は時代による。

『相州伝』

 南北朝時代以前と室町時代以降では出来に大きな差があるものの、正宗や貞宗などに引っ張られ全体の値段が高い。刃文よりは地鉄が楽しめるようになったらお勧め。しかし、とにかく品数が少ない。

 特に全体的に値段が高い。

『美濃伝』

 時代が新しいため基本的には在銘で、刃文もそれなりに派手で楽しめる。しかし大量生産品が大半のため、美術品目的としてはお勧めしない。

 全体に値段が安い。

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