四十振目 相州伝の初祖たる新藤五国光

 新藤五国光と藤四郎吉光、来国俊(又は景光)が短刀の名人とされ、特に国光と吉光が並び称され双璧・両大関と言われています。だから来国俊(又は景光)という感じ。

 国光が青味を帯び、吉光が白く冴える……とはいえど、並べて観せて貰った時はどうしても逆に見える。国光が白さを帯びた空の印象、吉光は青黒く深い海の印象。


 国光がどんな人物かはまたとして、データとしては以下のようになります。

 短刀は国宝3、重要文化財9、特別重要刀剣3、重要刀剣29※。

 太刀は重要文化財1、特別重要刀剣2、重要刀剣4。

 短刀・刀の区別は不明ながら重要美術8。

 ※61回重要刀剣までの数で途中数回の図譜集が抜けているため、実際にはもう少し多い。たぶん、あと3振りぐらいは増えるか。

 ※生ぶ無銘短刀3、銘切れ短刀1、大磨上無銘刀4は含めていない。

 以上のように現存作は比較的多いものの、市場に出る事は稀(過去10年で短刀数振りしか見かけず)であり、所有者の大半が秘蔵または博物館・美術館・寺院などに収蔵されている。

 とはいえ、この1年で特別保存で4振りも遭遇しているので、実際にはまだまだ存在していそう。

 ちなみにお値段は、在銘重要刀剣であれば1000万円以上。今まで見た最高値段は徳川家伝来品で2000万円。特別保存であれば600万円前後ですかね。これで短刀の値段ですから、うーん高い。

 ちなみに相州伝上作という事で、偽銘や偽金象嵌銘も多い品なので注意。


 短刀のデータ(重要刀剣29振より)。

  刃長:平均24.4センチ

  身幅:平均2.1センチ

  茎長:平均9.4センチ

  形状:平造り27、冠落し2

  茎反:反りなし10

  棟:三ツ棟23、庵棟5、丸棟1

  刃文:糸直刃3、細直刃17、直刃3、中直刃4、再刃2

  帽子:小丸27、丸1、焼詰1

  鍛え:板目肌29(沸映りあり12、肌ながれ10、肌立ち2)

  彫り:有り21(樋を除くと14)。

     素剣12(表11、裏1※)、護摩箸2(裏)、梵字9(表2、裏7※)

     文字1(表)、倶利伽羅2(表1、裏1)。

   ※素剣は基本は表、表に「南無八幡大菩薩」とある場合のみ裏。

   ※表に梵字がある場合は素剣と重ね彫りされる。

   ※裏に梵字がある場合は表に彫りがある。

  茎形状:栗尻22、先切り6、剣形風1

  鑢目:勝手下がり22、切り2、筋違い1、不明4

  銘字:細鏨4、太鏨4、大振り7、小振り1


 以上から国光の作風は、一般的に言われるとおり「定寸(8寸)前後の、平造りの三ツ棟。刃文はほぼ直刃で、切先は小丸。肌は板目で映り、ながれがある。彫りは素剣と梵字が多く見られる。茎は栗尻で、鑢目は勝手下がり」と言える。

 また正宗より始まった「湾れの刃文」も存在し、その予兆が見られる。


 鎌倉時代は太刀のイメージが先行するものの、当時の武士が日常で帯びるのは八寸前後の腰刀。そこから考えると、新藤五国光の短刀は腰刀そのものと言えそう。

 二度の元寇を経験し三度目に備えていた時代背景を考えると、梵字や素剣などの彫りを入れ、神仏の加護や合力を願ったのか? その割りに在銘が多いという事は少し意外な気も……貴人や神仏の為に制作したのであれば(正宗のように)無銘が多くなるのですが。

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