五十一振目 あまり注目されないハバキ

 ハバキについて改めて。

 刀身と鐔の間にあるもので概ねは金色。形状は概ね台形か四角をしており、刀身側を貝先、柄側を台尻と呼びます。この貝先の棟側が少し切り掻いた段になっていますが、これを呑込みと呼びます。

 刀身はこのハバキの中に少し入り込み、刃区はまちは区金と呼ばれる金属片に載っかり、棟区は呑込みに載っかります。その状態で切羽や鐔などを間に挟み、茎が柄の中に収まり目釘にて固定されています。


 金属部品ですから外す際には刀身を引っ掻かぬように、又は茎の錆を傷つけぬように行わねばなりません。

 特に朱銘や金粉銘はハバキでガリガリ削れますので要注意。

 しかし研ぎ減りの少ない大磨上など、ハバキが外れ難い状態があります。外れないハバキは本当に外れないぐらいに固い。外した瞬間にパキンと音がするほど填まっている場合もあります。

 ■刀身から外れない場合。

 やってはいけない事としては無理にハバキを揺らさないこと。外し方は、まず柔らかい布を用意します。それで刀身の横腹を持ち、下にずらしハバキを押します。こうすると上手く行きます。

 ただし、真っ直ぐに行わないとハバキが擦れて傷がつきますので注意。

 ■茎の途中で外れない場合。

 やってはいけない事は同じで、無理はしないこと。

 無理矢理外すと、錆が削れ下からピカピカの金属が出て台無しです。しかも貝先の金属などに錆が付着。再装着して放置すると刀身に一直線の錆痕を残したり。

 外し方はハバキがなぜ引っかかっているか、よく見極めます。

 大体は茎の断面が厚くなった鎬筋に当たっている場合が多い。こうした場合はハバキを棟側から軽く押し、鎬筋から少しずらしてやれば案外と簡単に外れます。

 ただし、それぞれ癖があるため観察が必要。

 立体知恵の輪と思ってトライします。


 博物館などでは、概ねハバキを装着した状態で展示されています。

 焼き出しや、茎の錆境などが見えないのですが……昨今はようやく外した状態で展示が見られるようになってきたので嬉しい。もちろんハバキそれ自体も下に置かれ展示されています。

 刀装具(鐔や笄など)は一つの美術品として扱われ展示されるものの……ハバキに関しては、あまり注目されず不遇な状況に置かれています。しかし、注意して見ますとこれが案外と面白い。時には透かし彫りがあったり、毛彫りや象嵌があったりと様々。

 もう少し注目されてもよいかも。


 ハバキの制作費は確認しておりませんが、5万円位でしょうか。ただし材料費が反映されます。金無垢ハバキで40gもあれば、当然18Kで金相場5000円としても15万円……細工賃を考えると20万円はかかる事になるはず。


 ハバキにも種類があります。

 形状的には一重ハバキ、二重ハバキ、太刀ハバキ。これに表面の細工が国別(庄内、越中、水戸、薩摩といった感じに)に存在。その他にも、象嵌があったり彫りがあったり様々。


 一重ハバキが最も標準で、太刀ハバキは呑口のない形状となっています。

 二重ハバキは、ハバキにハバキが付いたような外観で、内側を下貝、外側を上貝と呼びます。昔は古刀に二重ハバキという、お約束があったとも聞きます。外す際は注意せねば上貝のみ外れたり、もしくは興味本位で分解すると戻すのに苦労したりします。しかし外観は良いです。


 台付きハバキ。これはハバキの台尻と切羽が一体化したような造りとなったもので、短刀などで見かけるもので、概ね高い品に装着された場合が多いです。さらに葵紋や桐紋など、家紋が施された場合も多い。


 名称不明、樋の形状に合わせたハバキ。

刀身に樋がある場合は、ハバキを装着すれば隙間が生じます。この樋の凹みに合わせ、ハバキに凸を設け隙間を減らしたものです。真上から見ると、内部に )( といった形状の凸です。

 細工に手間がかかるため、これも高い品に装着された場合が多い。


 名称不明。ハバキの貝口の一番上に刃区が載るもの。これは短刀で見かけ、刀身を少しでも多く露出させようと工夫されたもの。もちろん、それだけ誇りたい刀身となっています。

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