八振目 錆のこと

 日本刀は鉄。

 ですから、放置しておけば当然錆びます。

 とは言えど簡単に錆びるものでもないです。

 現代刀匠作の小柄で試させて頂いておりますが、桐箪笥に収め簡単な白鞘に入れた状態で、今のところ四年が経過しても錆ておりません。 

 もっとも通常の刀であれば、やはり半年に一回程度は油の塗り替えた方が良いです。また、研いだ直後や、入手した直後などは週一や月一程度で油を塗り替え様子を見ていた方が良いです。


 そして!

 唾液や汗、そして血。これら付着した場合は、かなり早く錆が生じます。

 居合い最中に汗が落ち、演武後に拭ってみると染み(つまり錆の初期段階)になるぐらいです。

 または、試斬の後も要注意。藁のアクが付着し、それで五分程度で錆びた刀もありました。

 その他では、海辺の地方も注意が必要。新作刀が一週間も経たぬ間に錆が出てしまいクレームになった事もあったようです。


 たまに茎が錆びてる、と文句を言う方がいますが……これは黒錆なので問題ありません。むしろ、茎の錆こそが大事です。

 鑑定の大事なポイントでありますし、鑑賞のポイントでもあります。

 ねっとり黒味を帯び、均質に付着した時代錆なんて最高ですね。ハバキを外す際に下手な人がやると、これが擦れて多少剥げたりします。あまり神経質になる必要はないですが、やっぱり慎重に扱いましょう。

 鑑賞会などに貸し出すと、これが結構に削れて返って来るので取り扱いは注意して欲しいのですが……。


 稀にある誤解として『鉄製品が何百年も残るはずがない』と、博物館の中で力説する人がいます。気持ちは分からないでもないですが……。

 刀剣は過去の所有者たちが手入れを怠らず、刀身に油を塗布し皮膜を施す事で、何百年どころか千年以上も現存させてきたからこそ現存するのです。

 まさに歴史の積み重ね。


 錆びた場合は必ず研ぎに出しましょう。

 素人が自分で研ぐと余計に悪化させます。特にサンドペーパーなどで擦る事は厳禁で、その他の部分まで傷つけてしまう事になります。

 これで鎬筋を歪め、刃肉を削ってしまい、傷を深くしてしまい……最初の段階であれば簡単に直ったものが、自分で傷つけた後は研ぎを依頼しても簡単には直らなくなります。

 もちろん費用もそれだけ高額になるだけです。

 必ず最初から研ぎ師に相談しましょう。


 とはいえど、初期の小さな赤茶色の点錆(一ミリ程度)であれば、下記の方法で除去できる事もあります。(絶対に上手くいくとも限らないですが)

 1.油をたっぷりと浸すように塗布

 2.暖かい部屋に十分程度置く

 3.柔らかい布を使い、爪先でそっと押す

 4.少し除去出来たら、また1から繰り返す。

   ※一度錆に触れた布は同じ部分を使わない

   ※除去した錆粉を広げないように注意

 5.何度か行い錆が除去出来たら、次に打ち粉を使用した手入れをする。

 6.しばらくは毎日油を塗り替える


 コツは、しつこくやらない事です。油をたっぷり塗布して空気を遮断しておけば、そう簡単に錆は広がりません。根気にこつこつと、そっとやりましょう。

 上手くいけば錆が取れ、薄らと色の違うシミ程度にまで収まります。

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