赤い牙襲来

 現れたのは四人のミュータント。四人ともアムタウ族と呼ばれる超人たち。


 街中の道路の一部を占領するように、またいくつもの車を積み上げて、その上で堂々と待ち構えていた。


「ミュータント達って、何でこう、なんというか、登場の仕方が堂々としているというか強烈なんですかね?」

「俺が知るか」


 木場の問いに俺はぴしゃりと断った。


 市民たちはもう一人残らず逃げ去っている。


 待ち構えているのはやはり拓真君から聞いた話のとおり……以前やってきたミュータントのように、エルガイアを探すならば人間を虐げるほうが早い。という理由なのだろうか?


 おそらくだが市内と言えど、何万といる人々の中で、たった一人のエルガイアの姿になれる人物を探すよりも、ひと暴れして、人間を守る側にいるエルガイアを呼び込んだほうが確かに事を運ぶには早い。


 月島課長の指示の元、俺たちは自衛隊から貸し出された八十九式小銃を持って、シールドで壁を作る機動隊員たちの背後についた。


「あー、あー、ミュータントに告ぐ――」


 月島課長が拡声器で決まりごとのような台詞を出す。

 すると後ろから――


「舘山寺さん! 木場さん!」

「拓真君、優子君」


 自転車で着た二人が、ぜえはあと息を荒げてやってきた。

 自転車を止めて、夏の制服姿の拓真君が近づいてくる。


「ミュータントの数は?」

「四人だ」

「よし、俺が行きます」

「だが拓真君――」

「大丈夫ですよ、乱捕りでも副数人を相手にしたりしてましたから」


 気合の入った拓真君の声。シールドを立てている機動隊員の間を通って、最前線に出た。


 本当に大丈夫だろうか?


「舘山寺君」


 拡声器から口を離した月島課長が言ってくる。


「まずは、そのエルガイアという少年のお手並みを拝見しようじゃないか」

「ですが相手は四人ですよ?」

「だからなんだね?」

「…………」

「その顔は、言いたい事があるのかね?」

「いえ、ありません」


 拓真君。

 本当に大丈夫なのだろうか?


 ―――――――――――――――


 エルガイア討伐部隊、赤い牙。


 今までの先遣隊だとか、過去のエルガイアに強い恨みを持つ相手でもない。


 ――あいつらは、完全に、明確な『敵』だ。


 なんの遠慮も配慮も無く、全力で叩き潰す。


「俺がエルガイアだ!」


 積み上げられた車の上に立つ四人のアムタウ族のミュータント。


 全員叩き潰してやる!


 左腕は腰に構え、右腕を左から右に横一文字に切る。


 ――水平線の彼方に、太陽は昇る。


 右腕を天に向けてかざし、強く拳を握る。


 ――この腕は、太陽をも掴む腕だ!


「変身!」


 強く握った右手を、ぐっと胸に落とす。

「エルガイア!」


 ぐきり、ごきごき、ごきごきぐきりごきごきごき――


 体中が急激な変化を起こし、変身が完了する。


「さあ、来い!」

 俺は四人のミュータントに向かって、構えた。

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