太陽を背にし大地を守る者―Erugaia―

 朝日だった。


 山々の間から朝日が現れ、闇夜を消し去り、辺りが光で満たされる。

 怪人の動きが止まった。

 そして向いた先には、立ち上がっているエルガイアがいた。

 間に合った。


「先輩!」


 やっぱりそうだった。炎をエネルギーとするなら、アスラーダが言った〈太陽を背にし大地を守る者〉とはこういう意味だったんだ。


 先輩が、朝日を浴びたエルガイアが叫ぶ。


「うおおおおおおおおおおおおおおッ!」


 エルガイアのプロテクターのような部分が力強く発光し、さらに強みを増す。


 ドッ!


 それはエルガイアの踏み込みだった。すさまじい脚力で一気に怪人へと肉薄する。


「おらあッ!」


 回し蹴りで怪人が吹き飛ぶ。


 ――――――――――――――――


 力が、力が今までにないくらいあふれてくる!

 これならば、負けるはずが無い!

 起き上がったガノーゼが再び襲い掛かってくる。


「おらああ!」


 眼前まで迫ってきたガノーゼに右拳を叩きつける。

 ガノーゼが吹き飛んだ。

 なおもガノーゼは起き上がり、一直線に向かってくる。


「せいぁ!」


 膝蹴りで迎え撃つ。蹴りがガノーゼの顔面に突き刺さるようにぶち当たり、またも吹き飛ばす。

 ガノーゼが木の根と土砂できた壁にめり込むように叩きつけられた。


「うおおおおおおおおお!」


 今度はこちらがガノーゼに向かって猛ダッシュし、肉薄して拳の連打を浴びせる。

 拳をガノーゼに当てるたび、すさまじい轟音がする。

 ガノーゼの皮膚が、拳を浴びせるたびにひび割れて壊れていく。

 一度バックステップで後退し、高々と飛び上がって、蹴りを浴びせる。


 ズンッ!


 ガノーゼがひときわ土砂の壁にめり込む。

 さらにバックステップで後退し、ぼろぼろになったガノーゼに向かって構える。

 あとはこの右腕をヤツに突き刺すだけだ。

 凶暴性しか見えない分、アスラーダのほう強かったのかもしれない。そんなことがよぎった。


「ガアアアアアアアアアアアッ!」


 ガノーゼがこちらに突っ込んできた。

 こちらの構えは崩さず、冷静な気持ちで迎え撃つ。

 ガノーゼがこちらの顔面へ拳を伸ばしてきた。

 それをぎりぎりで回避し、右腕の手刀をガノーゼの胸に突き刺した。

 だが――


 いきなりガノーゼの首が飛び上がった。

「ッ!」


 肉体を捨て、背骨と頭だけになったガノーゼが頭上から、こちらへ大口を開けて迫ってくる。

 素早く右腕を引き抜き、頭と背骨だけになったガノーゼの開けた大口へ右腕を突き入れる。


「そんなに食いたきゃ、食らわせてやるぜ!」


 右腕に光のエネルギーを集中させる。そして――

「バースト!」


 ガノーゼの頭部がぼこりと膨れ上がり、爆発四散した。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

 勝った。


 全ての怪人たちを、倒した。

 周囲にいた機動隊、木場さん、舘山寺さんまでもが歓声を上げ、

 完全な勝利宣言をした。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る