突入―Battle―

「ゆっこ!」

 現場に戻ってきたとたん、木場さんと優子と鉢合わせた。

「先輩!」

「大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。ですが洞穴の中で大量の怪人が!」

「分かった、俺も行ってくる」

「がんばってください先輩!」

「ああ、任せておけ!」


 残るは女王ただ一体。洞窟の中へ駆け込む。


 中は硝煙と生臭いにおい。


 通路のような洞穴から、開けた部屋に出た。

 卵のような膜の塊からどんどん怪人が生まれてきて、異臭で充満していた。そんな中、次々と射撃で怪人たちを倒していく機動隊員たち、その中で舘山寺さんを見つけた。


「舘山寺さん!」

「拓真君! ここは任せて君は奥へ!」

「分かりました!」


 機動隊員の邪魔にならないよう、間を縫うように避けて通り、さらに洞穴の奥へ向かう。


 女王って、どんなヤツなんだ?


 奥へ進むと、また開けた空間が広がっていた。


「うん?」


 始めに見つけたのは、黒い怪人だった。


 胸板が分厚く、手が異様にでかく、指先はかぎ爪のようになっている怪人。

 こいつが女王?

 いや、違う。女王らしき怪人の死骸が一体、床に転がっていた。


 まだかすかに生きている。


 腹の破れた女王が、顔を上げた。


『少し遅かったようだな、エルガイア。我が子は生まれた……より強い種族を産み落とすのが我が使命。それは全うされた……』


「何ッ!」


『さあ行け、お前の名はガノーゼ。エルガイアを……倒すの……だ』

 女王が事切れた。


 こいつ、何だ?

 今までに無い妙な気配。ガノーゼ。

 そいつがこちらに向いて、


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」


 体中がびりびりとするような咆哮を、ガノーゼが発した。


 ――――――――――――――――

 

 撃つ、撃つ、とにかく撃つ。今は生まれたばかりで軟質な皮膚だが、一体でも硬くなった皮膚を得てしまったら、手がつけられなくなる。とにかく出てきたらすぐに撃つ。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」


 何だ、洞穴の奥からとてつもない雄叫びが聞こえてきた。

 そして奥から赤い光――炎が迫ってきた。

 その炎の中からエルガイアが、拓真君が転がり出てくる。


「どうした! 拓真君!」

「やばいっす! やばいやつが出てきました! 速く退避を!」


 こちらの返事も聞くことも無く、拓真君が全身に炎をまとわせ、今までとは違う禍々しい怪人と向かい合った。

 機動隊に呼びかける。


「全員退避だ! 全員洞穴の中から出ろ!」


 エルガイア、拓真君が迸らせる炎が、膜でできた卵たちにも移り、洞穴内が急速に燃え上がる。


 生まれたばかりの怪人や、まだ膜から出てきていない怪人たちが炎の中でもがいている。その姿を見て、こちらも洞穴の外へ走った。


 洞穴の通路を走り、出入り口から出たところで、爆発したような炎が出入り口をふさいだ……あともう少し遅ければこちらも炎に襲われていただろう。


 その炎の中から、エルガイアが飛び出てきた。


 川原の地面をごろごろと転がり、四つんばいになって姿勢を取り戻す。

 そして炎の中からまた一体、禍々しい姿をした怪人が飛び出してきた。

 そのままエルガイアへ向かって襲い掛かる。

 

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