第36話「お月見団子」

 僕は『お月見団子』が好きだ。お月見団子を思い出すと、隣のお婆ちゃんの顔が浮かんでくる。




「今夜、食べにおいでよ」


 隣のお婆ちゃんが僕に言った。夜、夕ご飯が終わったあと、隣のお婆ちゃんの家に行った。そこの縁側(えんがわ)で、満月を見ながら、団子を食べたのた。


 お婆ちゃんは独り暮らしだった。でも、とっても明るくて、元気いっぱいだった。お婆ちゃんちの縁側でのお月見団子は、高校まで続いた。


 久しぶりに東京から実家に帰った。実家で話していると、ふと隣のお婆ちゃんの事を思い出した。


 なので聞いてみると……




「えっ!何言ってんのよ。去年亡くなったわよ」


 と、母が僕に言った。僕は知らなかった。僕が東京に行くと知った時……


「また、お月見団子食べにおいで!」


 と、言ってたお婆ちゃん。


 僕は次の日、お婆ちゃんの仏壇に線香を手向けようと思った。


 でも……




 もう、隣の家は更地になっていた。


『お婆ちゃんごめんね。







 あと、今までお団子ありがと!』

 

 そう言って僕は、更地の真ん中で、線香を手向けたのだった。


おしまい


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