第9話 やめた
スリスリはええから、じっとせえ、じっと。
ちょ、ちょっとだけ動くなて。
……細ないか?
う、
産んだんか!
どこや、どこで産んでん。いや、お前ここで何しとんねん。お乳は。やらんでええんか。ああ! 餌やな。お乳出すために探しに来てんな。よっしゃ、ほれ、これ食え。ジャーキーや。どんどん食え。美味いか? 美味いやろ。腹いっぱいなったか? お乳も出るな。ほな巣に戻れ。さ、早よ戻ったれ。な。
行くか。
思て、ついて歩いた。
寝ころんで伸びし出しよった。
わしを警戒しとるんやろか。
思て、離れて待ってみた。
ウロウロして、座って毛づくろいしとる。
おかしないか?
お乳はしょっちゅうやらんなんて、本に……
「猫ですか? ちょっと……」
「はあ妊娠? しとったんけ?」
売店の姉ちゃんは人手不足の代打やった。
いりこのじいさんは目ぇやらなんやら悪かった。
公衆電話の電話帳で調べて保健所にかけた。
昨日今日に保護した猫はおらん言われた。
緑地中を探し回って戻ってきても、猫はまだくつろいどった。
そうや。
どっか世話になっとる家があって、そこに預けてるんかもしれん。
多分、そうや。
そうやなかったら、お前……
そうやなかっても……お前……
日ぃ、暮れるな。
えらい疲れてもうた。
わし、やめた。
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