第14話 光を放て! 白雪の奮闘!

 白雪の後に続き、紫水しすい弥生やよいとルイランを抱えて甲板の上へと飛び上がった。

 着地した紫水しすいが目にしたのは、オロチの尾の鋭い一振りをまともに浴びて、雷奈らいなが海へと墜落していくところだった。


雷奈らいなさん!」


 まっ逆さまに墜落していく彼女の様子に、船上で弥生やよいは思わず叫び声を上げた。

 だが、はじかれたように白雪が素早く光の矢を放つと、それは高速で宙を飛び、海面スレスレで雷奈らいな神衣かむいの首もとに引っかかった。

 光の矢はそのまま彼女を運び去っていく。

 あまりにも鮮やかなその技術に紫水しすいは思わず目を奪われた。

 針の穴を通す正確さと自由自在に矢を操るその力は、幼少の頃より英才教育を施されてきた白雪ならではの技術だった。

 同じ事をやれと言われたら紫水しすいは即座に降参するだろう。


 光の矢はそのまま旋廻せんかいして船の上へと戻り、紫水しすいの真上で雷奈らいなを振り落とした。

 紫水しすいは失神したままの雷奈らいなを抱き止めるとその体を甲板に横たえ、息のあることを確認した。


「この衣の防御力のおかげもあるだろうが、それにしてもしぶとい娘だ」


 そう言った紫水しすいだが、雷奈らいなの左の腕が骨折していることがすぐに分かった。

 そんな彼女の目の前で白雪が駆け出す。


「姫さま!」


 紫水しすいの呼びかけにも振り返らず、白雪は大きく飛び上がって船の最上階へと降り立った。

 紫水しすいを見下ろすと白雪は軽く手を振った。


「3人を頼みますわよ。紫水しすい

「無茶です! 姫さま!」


 だが紫水しすいの心配をよそに白雪は海上にそびえ立つ塔のようなオロチの姿を見据えた。

 海風が白雪のつやのある白髪を揺らす。


禍々まがまがしい神ですこと。あんなもののために響詩郎きょうしろうさまは……」


 白雪は怒りにくちびるを震わせると、静かに呼吸を整えて力を高めていく。

 オロチとの距離はわずかに200メートルほどである。

 小鬼らとの戦闘やヨンスとの果し合い、そして響詩郎きょうしろうへの魔族転生の施術。

 一連の行動で白雪の体力はいちじるしく低下していたが、雷奈らいなが倒れた今、オロチと戦えるのは自分しかいないことも彼女は分かっていた。


 白雪は自分を奮い立たせ集中力を研ぎ澄ませると、今日すでに数千本は放っている光の矢をその体の周囲に無数に展開する。

 白く輝く矢の先端は、全てオロチに狙いを定められていた。


 一方、弾き飛ばした雷奈らいなを救う光の矢を見ていたヒミカは、船の最上階である3階部分に光の矢の主である白雪が陣取っていることに気が付いて愉快そうに声を上げた。


「次の相手は狩人の娘か。面白い。遠距離射撃を得意とする相手にどのように対処が出来るか試させてもらおう」


 そう言うとヒミカはオロチの頭を白雪の方向へと転じた。

 ヒミカにとってこの戦いは試運転であり、ただ戦って勝つだけではなくオロチに何が出来るのかを見極める必要がある。

 色々なタイプの敵と戦えることは何よりの収穫だった。

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