第13話 転生なるか? 白雪の賭け

「打てる手は打ちました。あとは響詩郎きょうしろうさまを信じます」


 そう言った白雪の顔は言葉とは裏腹に不安がありありと表れていた。

 命を落とした響詩郎きょうしろうに対し、部族の秘宝・転生玉てんせいぎょくによる魔族転生を試みた白雪だったが、施術から1分以上経過した今のところ、何も変化は起きていない。

 転生玉てんせいぎょくを体内に含んだ白雪自身が感じていたことだが、絶対的に熟成時間が不足していた。

 本来ならばもっと長い時間をかけて白雪の体内で妖力を練り上げるべきだったのだが、準備期間が短すぎたのだ。

 息絶えた響詩郎きょうしろうは血の気のない顔のまま白雪の前に横たわっている。

 白雪は胸によぎる不安に重苦しいため息をついた。


「姫さま……」


 そばに控えている紫水しすいには白雪の不安が手に取るように分かった。

 本来、転生の施術は生きている相手に行うものであり、すでに絶命している響詩郎きょうしろうへの施術は効果がない恐れがある。

 心配停止状態の響詩郎きょうしろうに、ほんのわずかでも生命力の欠片かけらが残されていれば可能性はあるが、そうでない場合はこのまま何も起きないだろう。

 転生術は死者を蘇生させるための術ではないからだ。


 転生術については行うのはもちろん、実際に見るのも初めてのことなので、決められた手順以外のことは分からない。

 本当に響詩郎きょうしろうが目覚めるのかどうか、白雪にも紫水しすいにも見当がつかなかった。


 だが、このままここにいても響詩郎きょうしろうの体にすがりついて泣いていることくらいしか出来ないことは分かっていた。

 白雪は立ち上がるとそでで涙をぬぐう。

 船の外からは戦闘によるものと思しき音が聞こえてきた。


「先に戦場にまいりますわ。響詩郎きょうしろうさまのお目覚めをお待ちしております」


 そう言って白雪は再び戦場へと舞い戻っていった。

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