第2話 主を思うがゆえに 紫水の迷い
「はぁ」
コンクリート打ちっぱなしの殺風景な部屋に簡易的なベッドが置かれているだけのその場所は、バスハウスを見張るのに最適な場所であった。
「姫さま直々のご命令とあらば名誉あることだというのに、このどうしようもなく空虚な心持ちはどうしたものか……」
白雪の命令によって
ふいに
だが彼女の目はそうした夜景を通り抜け、その遥か彼方である東京湾のさらに向こう、房総半島の丘陵地帯までをも見通していた。
「我が家系に伝わる千里眼は本来、遥かな的を射るための一族の目となる誉れ高き力のはず。それがこのような……くっ。私は祖先に顔向けできん」
そう言う
弓矢を主な武器として使用する彼女の一族において、超遠視能力を持つ
白雪の直属になったときはその能力を活かして一族の役に立てると思い、喜び勇んだ
やがて
「【死の刻限】か……このまま
だが自分に課せられた任務はあくまでも監視と報告であるため、監視中の
彼らを襲った妖魔の正体にもさして興味はなかった。
主である白雪にはつい先刻、報告を済ませた。
報告すれば白雪は何もかも振り切って
まだ姫の
白雪の相手として
そのためには白雪が彼を助けるために駆けつけることは好ましくなく、そうした観点から見れば
だが、そのようなやり方はフェアではないと
そんなことをすれば彼女は今後、白雪の顔をまともに見ることが出来なくなるだろう。
虚偽で主を
案の定、血相を変えた白雪は今、慌てて
「それほどまでにあの人間の小僧がいいのだろうか」
生まれてから今の今まで一度として男性に好意を持ったことのない
だが、姫の側に仕える者として白雪の想いを理解してあげたい気持ちが
だからこそ
「私は一体どうすれば……」
前に白雪が言ったように、監視をするならばその相手の人となりまでを見透かせるようになってこそ一人前である。
出来ることならばもっとじっくりと時間をかけて見定めたかったが、
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