第11話 白イタチ・サバドの猛攻!

 白イタチが連続で放つ光の刃が次々と雷奈らいなを襲った。

 雷奈らいなはこれらを受け流し、身をかわしながら懸命に回避するが、さまざまな角度から迫り来る刃は雷奈らいなの四肢をかすめ、その表皮を切り裂いていく。

 雷奈らいなは額に汗を浮かべて、唇を噛んだ。


神衣かむいがあればもう少しマシなんだけどね。言っても仕方ないけど。ああ頭にくる!」


 霊的な防御力に優れた神衣かむいであれば、少しくらいの攻撃は防ぐことが出来る。

 だがそれを考えたところで意味はない。

 雷奈らいなは一秒でも早く攻勢に転じる必要があるのだが、彼女と白イタチの距離は一向に縮まらない。

 光刃の雨あられに耐え続ける雷奈らいなの体力は徐々に削り取られていった。


雷奈らいなさん。危ない!」


 弥生やよい雷奈らいなの危機に顔面蒼白になりながら思わず叫んでいた。


「大丈夫。アイツは喧嘩けんかマジで強いから。それにまだ奥の手を出していない」


 弥生やよいを落ち着かせるようにそう言うと響詩郎きょうしろうは口を真一文字に引き締めた。

 こういうとき、彼は直接的に加勢する術を持たない。

 無力感も感じる。

 だが、それでも響詩郎きょうしろうは心得ていた。

 自分がそんなことをしても雷奈らいなには毛の先ほども役に立たないことを。

 響詩郎きょうしろうがするべきことは体を使った戦いではなく頭を使って考えることだった。


響詩郎きょうしろうさん……」


 うめくようにそうつぶやいて響詩郎きょうしろうを見やり、弥生やよいはハッとした。

 目は冷静に戦況を見続けている響詩郎きょうしろうの拳が、小刻みに震えるほど強く握られている。


(……一番不安なのは響詩郎きょうしろうさんなんだ)


 弥生やよいはそう感じて唇を噛むと、戦いを続ける雷奈らいなに視線を戻す。

 戦況はいっこうに好転しない。

 必死に間合いを詰めようとする雷奈らいなだったが、白イタチの放つ光の刃の勢いは増し、今や彼女は一歩も動けない状態に陥っていた。

 むしろ後退しないように意地を張り続けているような状況だ。

 

 響詩郎きょうしろうはポケットの中に手を入れ、拳を握り締めた。

 雷奈らいなは反撃のタイミングを待っている。

 だが、それが出来ないまま光の刃の餌食えじきとなってしまうのも時間の問題のように思えて仕方の無い響詩郎きょうしろうは、嫌なイメージを払拭ふっしょくするように頭を振ると腹の底に力を込めた。


(白イタチは俊敏だ。間合いを詰めたとしても一瞬で捉えなくてはまたすぐに距離をとられてしまう。チャンスは一度きり)


 響詩郎きょうしろうは瞬きもせずに戦況を見つめ続け、その機会をひたすらに待ち続けた。

 一方の雷奈らいなは体のあちこちに傷がつき出血箇所も少なくはなかったが、体が興奮状態にあるため痛みは感じなかった。

 今、雷奈らいなの身の内にあるのは燃えたぎるマグマのような強い憤怒だった。

 雷奈らいなは歯噛みして白イタチをにらみつける。


「よくも私をこんな目に……」


 小学校時代に教室で雷奈らいなの髪を引っ張ったイジメッ子は、彼女の拳を顔面に食らって青アザをいくつもこしらえることになった。

 中学校時代に雷奈らいなの尻を触った痴漢の犯人は、彼女の肘打ちをもらって上下の前歯4本を失うことになった。

 高校時代に雷奈らいなのカバンを盗もうとした引ったくり犯は、彼女の回し蹴りを浴びて白目をむいて失神した。

 いつだって雷奈らいなは、自分に危害を加えようとする者には倍以上の返礼を持って返り討ちにしてきたのだ。


「ああああっ!」


 雷奈らいなは気を吐いて大声を張り上げると、迫り来る光の刃を両手の護符で叩き落とし続けた。


「しぶとい女だな。だが、そろそろ楽にしてやるよ!」

 

 そう言ってニヤリと笑うと、白イタチは大きく上空に飛び上がり、背筋せすじをそらして両腕を交差させる。

 白イタチの頭上に白く輝く三日月型のひときわ大きな光の刃が形作られていく。


「くらえ!」


 ギロチンのように巨大な刃を見た雷奈らいなの背中に冷たい汗が流れ落ちた。


(くっ……まずい……あんなの受け切れない)


 罪人の首を切り落とさんとするかのごとく光り輝く刃が、夜の闇の中で雷奈らいなの首に狙い定められていた。

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