その名も試練
「ここの公式はテストに出るから忘れないようにな〜」
昨日はあれから課題をやって寝たのだが、隣のトモちゃんのお部屋から何やら少し叫び声が聞こえてきた。
(やっぱり受験に向けての不安もあるのかな)
わたしが何かサポート出来るといいんだけど。
そんなことをぼんやりと考えていると、
———キーンコーン カーンコーン
授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「水瀬さん」
「ん、何?」
すると隣の席の三上くんが声をかけてきた。
「水瀬さんは球技大会何に出るか決めた?」
「球技大会…?」
「あれ、知らない?来月の期末考査が終わったらクラス対抗の球技大会があるんだよ」
「知らなかった…。もう期末考査かぁ」
「ははっ、そっちの心配の方が大きいよね」
あっという間に一学期が終わってしまう。
「三上くんは決まってるの?」
「俺は恭弥と同じでバスケかな。女の子は確かサッカーとバレーだったと思うよ」
「そっかぁ。わたしは何にしよう…」
美久ちゃんはバレーだろうけど、郁ちゃんは何にするんだろう?お昼休みにでも聞いてみようかな…。
運動が大の苦手なわたしからしたら、今回のこの球技大会は試練でしかない。どうにかして回避したいものの美久ちゃんの本気の姿を見たらそんなことはもってのほかだろう。
「水瀬さんは中学生の時部活とかやってたの?」
そんなわたしの落ち込みようを察したのか少し笑いながら問いかけてきた。
「い、一応…。家庭科部に入ってたの」
「家庭科部ってことは料理作ったりするの?」
「うん。後はお裁縫とかも…」
「水瀬さんらしいね。俺はそういうの苦手だから尊敬しちゃうよ」
「ふふ、そうかな?ありがとう」
「今度水瀬さんの作ったお菓子とか食べてみたいな」
「本当に?時間がある時作って持ってくるね」
「わ、嬉しいな。楽しみにしてる」
三上くんは穏やかな性格をしているので話していてとてものどかだ。それに話の切り替えが上手なので先ほど沈んでいたわたしも復活した。
「あ、そろそろチャイム鳴るね」
腕時計を見て教科書の準備を始める三上くんは女の子たちの間で『王子さま』と定評がある。
神宮寺くん曰く、たまに抜けてるので一緒にいて飽きないらしい。
「球技大会頑張ろうね!それに期末考査も!」
よしっとガッツポーズするわたしに、またもクスクスと笑う三上くん。
「水瀬さんは喜怒哀楽が丸わかりで見てて面白いよ」
「え?」
「ん、こっちの話」
よく聞き取れなかったが、
「はい、では号令」
その先生の言葉よって授業が始まった。
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