百合の薫りに誘われて。
リズさんの卒業を春に控えた、百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」。
今まで彼女がやっていたお仕事を、
「うわ……結構な量が有るわね」
閉店後。
洗濯乾燥機へ洗い物を入れながら、由理はつぶやいた。
普段はリズさんがお店で洗濯して、たまにクリーニング業者に出していたのだ。
(春からは、私がやらなくちゃ。……
一人で住み込みメイドのお仕事は大変かも。
お洗濯前のメイド服を抱いて、考える。
「あ……なんか、いい匂い」
誰かが脱いだメイド服から、桃みたいな甘い薫りが、ほんのり立ち昇った気がした。
(この匂いは、季紗のかな。甘くて、爽やかで……)
「ん……っ、すぅ……すぅ……」
つい胸が妖しく疼いて。
脱ぎたてメイド服を抱き締めてすーはーすーはー……。
「……えと、由理? あんまり嗅がれると、恥ずかしいかなって」
私服へ着替えた季紗に、見られてた。
2人で、真っ赤になる。
「……ち、違うの。違うのよ、これは? メイド服の匂いでドキドキしてたとかじゃなくて……!」
涙目で、説得力ゼロの弁解を……。
「匂いフェチとかじゃないんだからねぇぇっ!?」
「だ、だいじょうぶだよ由理! 私だって女の子の匂いにムラムラするし! 変態だとか、思わないから!?」
さしもの季紗も、自分のメイド服をくんかくんかされるのは照れるみたいで……もじもじしながらも、由理をフォロー。
「ゆ、由理が私のパンツをくんかくんかしててもっ! 私は受け入れるからね!?」
「私が変態っぽくなるフォローやめてぇ!?」
そんな行為はいたしません!と言う由理へ、季紗は頬を赤らめて妄想。
「……ふわ。嗅がれるのも、ドキドキするかも♪」
「や、やらないってばぁ!?」
そんな由理の肩を、ホールの掃除を終えてやって来たリズさんが、にこにこしながら叩く。
「ふふ、恥ずかしがらなくていいのよ。私も、お洗濯の時、いつもやってるもの♪」
「え、リズさんも匂いフェチ!?」
ようこそディープな世界へ♪的に微笑むリズさんに、驚く由理。
季紗が、冷静に指摘した。
「由理? リズさん『も』って言っちゃってるよ?」
「ひぅぁ!? わ、私は違うんだからねー!?」
あくまで自分の性癖を認めない由理へ、リズさんが真面目な顔で言う。
「大事よ、匂いを確かめるのは! どれくらい汗を掻いてるかとかで、みんなの健康状態をチェックしてるんだから!」
「他にやり方あるでしょぉ!?」
メイド服とかをくんかくんかするのも、リズさんが言うには百合メイドのお仕事のようです。
さて、匂いを嗅がれてた季紗は、いつもより羞じらいながら、
「と、とにかく、私は平気よ? 好きな人にだもん、ど、どこを嗅がれたって……♪」
でも、と、
「できれば、キ、キスしながらが……嬉しいかな」
「だ、だから私は、匂いに興奮とかしてないんだけどっ」
唇を突き出しキス待ち顔の季紗、その華奢な肩を抱いて由理は、
「ま、まぁ、健康状態とか確かめるなら、百合キスがいちばんよね? こ、これもお仕事だよね?」
色々言い訳しながら、季紗と
「……ちゅっ、んぶ。むぅ……んく♪」
舌を絡め、唾液を味わいながら……つい、季紗の火照ったカラダの、淡い汗の薫りを嗅いじゃったりしてるけど……。
「ちゅぷ、んむぅ♪ ち、違うの。別に私、匂いフェチじゃないんだからぁ!? ……ちゅぅ♪」
「ふ、ちゅぷ♪ んっ、ちゅぱ……ちゅぷん、んあ……♪」
甘く立ち昇る、百合乙女たちの薫り……キスに
「ふわぁぁ……♪ 女の子の匂い、大好き♪」
……変態って、呼ばないであげてほしい。
彼女たちは、女の子好き好きな、百合メイドなのだから。
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