子供ができてしまいます

【前書き】

 美緒奈が読んでるのは、2015年冬コミで作者が買った同人誌……松岡二様のGO!プリンセスプリ○ュア本「みなはるとはるきらの本 2」と「子供ができてしまいます」の二冊。

 作者様の許可は取ってますので!


 ※ ※ ※


 冬コミからの帰り道、電車の中で二人、座席に掛けながら。


「こ、こら美緒奈みおな。また電車の中で、同人誌広げないでよ……」


 ゴスロリ美緒奈が明らかに百合な本を読んでるので、由理ゆーりの方が赤くなって、たしなめる。

 美緒奈はというと、夢見る乙女のうっとり顔で、本を抱き締めて。


「だってさ、この作家さんの本、続きすっごく楽しみにしてたんだぜ? ……良かった、ハッピーエンドで」


 美緒奈があんまり感動してるから、由理もつい興味を持った模様。


「どんな本?」


 聞くと、美緒奈はジト目で、


「……百合で、三角関係な本」


「うぐぅ!?」


 ガタン、ゴトン……。

 しばらく電車の音だけが、二人の間に。


 しばらくして、由理。


「……もしかして、納得してない?」


 四人で恋人になったこと。美緒奈一人に決めなかったこと。


「さーて。どっかなー?」


 悪戯っぽく笑ってみせる美緒奈だけど、本当は、自分でもわからなくて。


「……キスしたら、わかるかもよ」


 電車の中で、百合キスをねだった。


「ふぇぇ!?」


 お店の外でキスする勇気は、由理にはないのだけど。

 潤んだ瞳で美緒奈が見つめる。


「……好きな人とは、キスするんでしょ。由理があたしを好きか、わからせてよ」


「……うん」


 羞じらってツインテールを弄る美緒奈が可愛くて、愛しくて。


 二人、周りの乗客がびっくりするのも構わず、唇を重ねた。


「ふゃっ……んちゅぅ。ちゅぶ、んぷ。ふ……んくぅ……」


「るちゅ、ずぶ……。ふぅ、くぷっ……♪ やふ……ん♪」


 とろとろ熱い唾液を、舌をたっぷり絡ませて。

 魂を溶かし合いひとつにする、濃密な接吻ベーゼ


(や……♪ 顔が熱い……♪)


 由理がどれだけ、あたしを愛してくれるか。

 お口に流し込まれる、いっぱいの甘い唾液を飲めば、ハートでわかる。


「ふぁ♪ ぢゅぼっ、ずちゅう♪ ちゅ、ちゅぅーっ。んぱ、くちゅぅっ♪」


「んっ、ぐちゃっ♪ るぷ、るぱっ。ちゅぅ……ん♪ ぢゅぱぁっ♪」


 ゆっくり唇を離せば、銀の糸が美しい緒を引く。

 優しく光る、唾液の愛の糸を。


 わかってくれた?と、熱っぽい瞳で問い掛ける由理へ。


 美緒奈はドキドキする胸を押さえて、


「……こんなにキスしたら、子供ができちゃうね♪」


「……ふぁ!?」


 ますます赤くなる由理だけど、美緒奈が胸に抱いた本に気付いて、


「って今の! どうせまた、本のセリフでしょ! ちらっとタイトル見えたんだからね!?」


「えへへ……♪」


 照れ笑いながら、美緒奈はもう一度、由理に唇を近づける。


「……『大好きだよ。貴女の子供、いっぱい産ませてね』♪」


 ……ちゅぅっ、と。熱く、深いキスをした。


「……み、美緒奈のばか。本の真似ばかりして」


 頬を朱に染めて羞じらう由理に、何度もキスしながら。

 美緒奈は思う。


(へへ、今のは、同人誌のセリフじゃないよ?)


 告白して、良かった。

 いつかは、この唇を独り占めしたいけど……恋人としてキスできる今が、幸せ。


(ホントに、由理の赤ちゃん産みたいな……♪)


「ちゅっ♪ んんーっ、ちゅぷぅ♪」


 借り物のセリフじゃ伝えきれない、この気持ち。

 唇に乗せてなら、きっと伝わる。

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