ときめきハロウィン週間⑦ 包帯で、縛って。

 週末の朝。ハロウィン週間ももうすぐ終わり。


「まだ、このコスプレはやってなかったよね。どうかな、由理ゆーり?」


「どうって、その……。き、季紗きささん?」


 百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」の更衣室にて。

 コスプレで可愛らしくポーズを取る季紗へ、メイド服の由理は、


「ほとんど裸じゃないのよぉぉぉ!?」


 赤くなるしかなかった。


 今日の季紗のコスプレは、だいたい全裸。

 白い肌に、これまた純白の包帯を申し訳程度に巻いて、見えちゃいけないとこだけ隠してる。


「裸じゃないよ! これはミイラ娘。立派なハロウィンのコスプレです♪」


「ずれてる! 包帯ずれてるからぁぁ!?」


 ぷるんっと揺れる胸から、包帯が外れて……真っ裸になってしまいそうなのを、由理は慌てて直してあげた。


「あくぅ♪ も、もうっ、由理ってば。もっと、優しく縛って♪」


「え、SMじゃないんですけど……」


 裸のカラダ、柔らかな肢体に包帯がぎゅっと食い込むと、季紗がえっちな声を上げる。

 ソフトSM、包帯プレイ。

 そんな連想に、由理が赤くなるのも仕方ない。


「ねえ、由理もいっしょにやろうよ、ミイラ娘。すっごくエッチだよ♪」


「それはやる理由になりませんっ!」


 由理、今日はメイド服でいいかなーなんて思い始める。

 ほぼ全裸で頬を染めてる季紗に、聞いてみた。


「……にしても、今日はいつも以上にエロ乙女ね。どうしたのよ?」


「……由理こそ」


 意外にも、真剣な顔で返された。


「最近、リズさんとか美緒奈みおなちゃんと、すっごいえっちな百合キスしてるよね。すっかりレズに目覚めちゃった感じ?」


「ふぇぇ!? い、いや、もうノンケだなんて言わないけどさ!?」


 ストレートに聞かれて、由理赤面。


「そ、その、キスは仲良し表現であって! べ、別にえっちな気持ちがあるわけじゃないんだからね!?」


「むぅぅ、なんか複雑……」


 キスされて羞じらう、今までの由理も好きなのよね、なんて。

 口の中でつぶやく季紗。


 でも、それ以上に。


「……由理の唇、独り占めしたいな」


「え、ええっ!?」


 ……ちゅ、と軽く口づけしながらの告白に、由理真っ赤。

 そんな由理に、悪戯っぽく微笑みながら。


 ふふ、冗談だよ、と季紗はごまかした。


「でもっ! えっちな格好したら、由理がもっとキスしたくなるかなって思って♪ だからミイラ娘なんだよ♪」


 裸に巻いた包帯を、ちらり♪とずらして見せて、舌を出す小悪魔な季紗。


「ゆりっくorゆりーと♪ 百合キスしてくれないと、脱いじゃおっかな♪」


「わー!? わー!? もう全部脱いでるようなもんじゃん!?」


 ぽっ♪と頬を染めながら、するする包帯外しちゃおうとする季紗を、由理は止めようとして。

 慌てて肩を抑えて、足を滑らせた。


「うわわっ……!?」


「きゃぁっ……!?」


 押し倒すような格好で、二人仲良く転倒。

 ホコリも無い更衣室の床に。


 ……そして。

 揺れるカーテンから差し込む光が、なんだか綺麗に見える世界で。静かな空間で、


「……あ」


 二人、いつかのファーストキスのように。

 微かに触れ合う唇の感触に、息を飲んだ。

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