先輩が来た! 終 ~転機~
「先代の
「そうですか。そ、それはともかく…」
由理に見覚えがあるという奥様へ、由理は赤くなりながら、
「顔が……ものすごく近いのですけど」
近い。キス寸前なくらい近い。
そこまで近づかなくても、思い出せるのでなくて?奥様?と聞きたいくらい。
奥様も羞じらいながら、
「ごめんなさいね。キス……したくなっちゃった。なにか思い出せるかもしれないし」
「も、もうっ……。恥ずかしいけど、いいですよ……」
今日はOG会。OGのお姉さまが望むなら、
「……ちゅっ♪」
そして、年の差を越えて、唇が重なった。
上品に口紅を塗った奥様の唇と、瑞々しい女子高生の唇が。
「んっ……はむっ。ふぅっ、ちゅ……♪ んむ、んふぅ……♪」
貴族の奥様にご奉仕するメイドの気持ちで、由理は丁寧に舌を絡める。
キスの水音に、甘い喘ぎが重なる。
「ふぶ、んく……♪ ど、どうですか、奥様ぁ……。ん、なにか、思い出せそうです?」
「ちゅ……るぷ、ぬぶぅ……♪ いいえ、まだよ。……でも、もっと貴女の唾液を
ぎゅっと抱擁を交わし、ちゅぱちゅぱ百合キス。
唇を離し、とろーんと銀糸を交わしながら、奥様は、欲情に
「はぁ……はぁ……。キスが甘すぎてぇ。なにも、思い出せないよぉ♪」
「だめじゃん!?」
さて、同じテーブルで、そんな様子を見つめてた別のOGのお姉さまが、
「むー……」
ちょっぴりジェラシーな表情でジュースのストローに口を付けつつ。
「先輩、私もそのメイドさんに見覚えありますよ。私達が高校生の時、大学生だったお姉さまだと思うけど。すっごく親切で、キス大好きなお姉さまだったような……」
由理とキスしてた奥様より、少し若い印象のお姉さまが言う。
「あら、貴女も? もっと何か、思い出せない?」
「思い出せませんよ。だって……」
お姉さん、奥様を熱っぽい瞳で見つめながら。
「私は……貴女しか見てませんでしたから♪」
「いきなりそんな告白!?」
奥様びっくり。
同僚だったのだろう、20年越しで愛の告白されたようだ。
「も、もう……♪ もっと早く、言ってくれれば良かったのに……♪」
「だ、だってぇ……。拒絶されたらって考えたら、怖くて……」
どちらからともなく、腰に手を回して。
抱き合って……ちゅぅぅぅ♪
置いてけぼりの由理、困った。
「……2人の世界に入っちゃったよ、この人達……」
結局、奥様達は詳しいことは思い出せなかった。
というか、後の時間はずっとOG同士で百合キスしてた。
※ ※ ※
「それでは皆さん、また再会できる日まで、お元気で! 百合は、永遠に不滅です♪」
幹事の
百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」OG会は、「来年もやろうね♪」との声が上がり、満場一致になったところで、今年はお終いとなった。
思い思いに乾杯や百合キスするお姉さま達を、他の百合メイドといっしょに見守りながら由理は。
(もしかして、私のお母さんが? ……ないよね、まさか)
昔、自分とよく似た百合メイドがいた……奥様のその言葉を、脳裏に
心ここにあらず、といった調子で、ぼぉうっとしていると。
「……ちゅっ」
いきなり
「仕事中になに突っ立ってんだよ。ほら、OGの先輩達を見送るぞ?」
「あ、あんたねえ。普通に声掛けなさいよ!?」
顔真っ赤にして由理が怒ると、美緒奈もじもじしつつ、
「ゆ、由理が年上のお姉さま達とキスして、デレデレしてるからっ。美緒奈様の唇がいちばん甘いんだぞって、教えてやろーとしたの!」
「な、なにそれ意味わかんないわよ、ばか……」
甘い空気が流れだしたところを、リズさんに注意された。
「ほら、2人とも整列して? 皆様お帰りよ」
慌てて整列、百合メイド達みんなで、OGの皆さんへ、
「行ってらっしゃいませ、奥様♪」
……そう、別れの言葉ではなくて。
それぞれの日常という戦いへ帰還していくお姉さまへのエールと、またいつでも帰ってきてね♪との思いを込めて。
百合メイド達は、うやうやしく頭を下げ、笑顔で見送るのだった。
そんな中でも由理、例の奥様が可愛らしく手を振ってくれるので、赤くなりながら手を振り返して。
(私のお母さんも、百合メイド……? なにかアルバムとか、残ってないかな)
お店になにか、資料とか残ってるかも。ちょっと調べてみようかと考えるのだった。
《続く》
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