やっと、気付いた。

「ちゅぅ……んっ。はふ……んぢゅぅ。ゆ、由理ゆーりお姉さま、もっと、熱いのください……♪」


 熱い唾液を百合キス交換で夢見心地なのは、お嬢様然とした中学生の少女、前園まえぞの円美まるみ

 すっかり接吻くちづけとりこ


「ふふ、今日も可愛いですね、お嬢様? ……ちゅっ♪」


 由理も百合メイドとして、こんなセリフが言えるようになりました。

 百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」のメイド達には、それぞれファンの女の子がついている。

 円美という妹分ができたことで、由理もようやく一人前。

 それが嬉しくて、つい舌まで挿れてみちゃったり。


「れろぉ、ぬぶぅ♪ 毎日来てくれる円美お嬢様に、サービスです♪」

「ふぁぁん♪ お姉さま、そんな、私の奥にぃぃ……♪」


 ……でも。

 ひとり、そんなイチャイチャが面白くないのが……。


 ※ ※ ※


 ある日の昼営業中。

 休憩室にて。


「……由理のロリコン」

「なに怒ってんのよ、美緒奈みおな?」


 携帯ゲーム機のボタンをピコピコしながら、美緒奈がジト目で見上げてくる。

 赤毛ツインテールのロリメイド美緒奈、最近ずっと不機嫌。


「別にー? 怒ってなんかねーし。ただ、ここんとこ、あの中学生とばっかキスしてるよなーって」


 由理、頬を染めてデレる。


「だ、だって。私指名の常連さんって初めてなんだもん。その、なんか可愛く思えちゃって……♪」


 由理がデレるのと反比例で、美緒奈がツン。


「あっそ! あたしには関係ねーけどっ!」

「だ、だから何怒ってるのよ……」


 2人だけの休憩室、いこいの場のはずがなんだかギスギス。


「う、うるさぁいっ! 由理には、教えないんだからぁ!?」

「教えてよ! ……だって」


 泣きそうな美緒奈の頬を、由理が両手で挟み、捕まえた。

 至近距離で見つめられ、羞恥に赤くなる美緒奈の顔……その潤んだ瞳を、真っ直ぐ覗き込んで由理。


 知らず、鼻先へ甘い吐息を吹き掛けながら。


「私は、美緒奈のこと好きだもん。私が悪いならちゃんと謝るから……言ってよ」

「ち、近っ!? 顔が、近いってば……!?」


 キス寸前の体勢に、美緒奈の頬が溶けそうに灼熱していく。

 恥ずかしい台詞もすらっと言っちゃう、由理のどストレートな友情アタックに、美緒奈、耳までオレンジ色。

 ツインテールと一緒にどっきんどっきん、鼓動がぴょんぴょん跳ねる。


「ゆ、由理は悪くないってば。あたしの問題っていうか、そのぉ……」


 ごにょごにょ。


「い、言わないっ。やっぱり言わない! ……でも」


 とびきりの羞じらい顔で由理を見上げて。


「キ、キスしてくれたら……ぜんぶ許してやんよ」

「うん……。分かった」


 ここは由理、迷わず美緒奈と唇を重ねた。

 ……ちゅっ。くぷっ……くちゅぅ。


 ゆったりと時間を掛けて、溶け合うような百合キス。

 美緒奈、ふと、腑に落ちたように。


「……そっか。あたし、やっぱり好きなんだ……」

「……? なんのコト?」


 もちろん、由理のコトが。

 あたしは今、恋をしている。

 でもそれは内緒で、にかっと照れ笑いして。


「もっちろん、百合キスのコトに決まってるだろ♪」


 なぁに、由理ってば自分のコトとでも思ったー?なんて、冗談めかしてみせるのだった。

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