プール開き編 終 裸の私で、いられる場所

 百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」の夜営業中。


「ふふ、やっぱり水着より裸より、百合キスが好き♪」


 ちゅぷっ、ずぷっと、もつれて絡み合う艶めかしい舌と舌。

 優しい瞳でお客様達が見守る店内にて、メイド服姿の季紗きさ由理ゆーり接吻くちづけを交わしていた。


「ちゅぷ、んくぅ……♪ き、季紗ったら、いつになく、激しっ……んぷぅ♪」

「だってぇ、学校の皆の前じゃ、キスできないし。んぶぅ、ちゅん♪」


 痛いくらいに強く指を重ねて、ずぶずぶと舌を唇へ出し挿れ。

 上気した頬に、とろんとした瞳が扇情的。


 プール清掃が終わった後、季紗はお店にきてずっと、この調子である。

 れるっ、と甘い唾液を舐めすすりながら、燃える唇を押し当てて、


「んっ、好きぃ、百合キス好きぃ♪ この、繋がってる感じが、好きなのぉ♪」


 ちなみに店内のお客様達……もちろん皆百合乙女だ……も、「分かる分かる」と言わんばかりに頷いている。

 そんな乙女達に見守られながら由理、赤くなる。


「ん、もうっ。季紗、発情し過ぎ。水着見たせいかしら」


 舌先を繋ぐ銀の糸が、淫靡に揺れる。

 吐息に溺れそうな至近距離で、由理がじろっと睨んでやると、季紗はお姫様のような可愛らしい顔に、少しのかげを含んで、


「……やっぱり、私みたいなえっちな子は、嫌い?」

「……うぐ」


 可愛い。むしろ天使。なんて感想を抱いてしまい、思わず由理は頬を染めて視線を宙に泳がす。

 季紗のさらさらな髪、うれいを含んだような伏せがちの睫毛まつげ。ぷっくりと柔らかい桃色の唇に、甘い薫り。


「き、嫌いとか、そんなわけないでしょ」


 ちゅう。

 由理の方から、さわさわと胸や腰を愛撫してあげながら、季紗と唇を重ねる。


「ばか。こんなにキスしておいて、今さら……んぷぅ♪」


 えっちで百合キス魔な季紗も好き。そう伝えるのに、言葉なんて要らない。

 かわりに深く深く、蕩けるベーゼを交わすのだった。


「ふふ、嬉しい……。んぷぅ、じゅる……ちゅずずぅ♪」

「ぬぷぅ、ぬぷ、ふぅぅ……♪」

「……てか長過ぎ。いつまで2人だけでキスしてんのさ」


 美緒奈みおなに怒られた。

 お客で来ていたメイドのふぶきも、激しくジェラシーな視線。


「そうですっ。私だって季紗お嬢様とキスしたいのです! オムライス口移し2時間待ってるですよ!?」


 美緒奈、由理と季紗の間に割って入って。

 唇と唇を繋ぐ唾液の吊り橋をぺろっと舐め取り、ツインテールを揺らした。


「お客様達をほっといて、メイド同士でずっとキスなんてダメなんだからね! 罰として、由理はあたしと息が苦しくなるまでキスすること!」

「え、罰もキスなの!? ちょ、美緒奈……んちゅぅ♪ んむっ、んんっ」


 問答無用で唇を、美緒奈の苺色の唇に塞がれて、離さないとばかりに抱き締められて。


「んんっ……んぅー、ふ、んんんぅぅ! み、美緒奈、苦しっ……」

「お、お仕置きなんだからぁ、苦しいのは当たり前だろ!? 我慢しろ、ばかぁ。ちゅうぅぅ……♪」


 そのまま床に押し倒された。


「わぁ、美緒奈ちゃんも激しい♪ ふふ、じゃあ、ふぶきさん、私達も負けてられないね♪」


 もちろんキスし足りない季紗、妖しく微笑み唇をぺろり。


「お待たせしました、お嬢様。口移しサービスですよ♪ ちゅぷぅ、ぬぶぷっ♪」

「んちゅぅ♪ 季紗お嬢様と口移し、ふぶき幸せれふぅ♪ ちゅ、ふぅぅぅ♪」


 床で、テーブルで、咲き乱れる百合の花園。

 触発されたように、喫茶店のお客様達もめいめいに百合キスに興じ始める。


 ちゅぷ、ぬぷぬぷ……。唇と唇、吐息と吐息が重なる愛のハーモニーが、店内を充たす。

 その光景を聖母マリア様のように慈愛溢れる笑顔で見守りながら、リズが金髪縦ロールを揺らして、


「ふふ、季紗ちゃん?」


 優しく声を掛けた。


「このお店に出会えて、良かったわね」

「はい、リズさん……ちゅぷぅ♪」


 ふわふわオムライスを舌に乗せて、ふぶきと百合キス口移ししながら、季紗は微笑んだ。

 中学の時とも、学校とも違う……百合キス大好きな自分をさらけ出しながら。


「ここは、ありのままの自分でいられる場所だから。私はこのお店が、大好きです」


〈プール開き編 終〉

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