百合フェス編③ 実はコスプレあまりいないGLF……でなく百合フェス
朝の小雨も無事止んで、今日は絶好のお出掛け
「キマシタワー!! にへへ、百合同人誌がいっぱいだー♪」
さっそく美緒奈、頬がゆるっゆる。
中小サイズの同人イベントが毎週のように開かれていることで(一部に)有名な、この聖地。
学校の体育館くらいな広さのホールで、今日開かれているのは……。
「全っ部、百合作品なのね。……業が深いわー」
由理を戦慄させるこのイベントは、そう、百合作品オンリーの、同人誌販売を主体としたイベントなのである。
「ねえ、ところで美緒奈?」
「ああ、あの本可愛いなー♪ おっと、あのサークルさんは外せねーぜ♪」
お小遣い足りるかな?と幸せな心配をしてる美緒奈へ。
由理は、赤くなりながら耳打ちするのだった。
「……ねえってば。私達、すごい目立ってない?」
……目立っていた。
とても、注目を浴びていた。
「コスプレ、私達だけじゃん……!」
「だけじゃねーよ。あと……1人か2人はいるよ?」
これが目立っている理由!
コスプレ参加OKのイベントでありながら、男女半々で数百人ほどの参加者は、皆普通の格好だった!
「は、恥ずかしい! 明らかに私達……浮いてるよ!?」
美緒奈とその母に押し切られるまま、魔法少女の格好で参加の由理、激しく後悔。
テレビで見たコミケのように、コスプレの人ばかりなのを想像していたらしい。
皆でコスプレすれば恥ずかしくないもん理論が、前提からして崩壊だ。
「いいじゃん、目立つの。この注目の視線……快感♪」
同じく魔法少女コスの美緒奈は、むしろ注目が嬉しいらしい。
熱い視線を送ってくる女の子達の声が、由理たちの耳に聞こえてくる。
「杏さやだよ杏さや! 2人であの格好だなんて……やっぱり付き合ってるのかな♪」
「きっとそうだよ! 百合フェスに、あの百合ップルの格好で来るなんてっ。恋人さん同士でないはずがないよ♪」
そんな声に、由理は。
剣士風マントに音符の髪飾りを付けた、青いコスチュームをひらひらさせながら、
「あの、美緒奈さん? 私、このアニメよく知らないんだけどさ」
長い髪をポニテにまとめ、赤いノースリーブ衣装を着た美緒奈へ質問。
「このキャラクター達って、どういう関係なわけ?」
妙にキャーキャー言われてる理由が気になるのだった。
……だいたい想像は付くけど。
「か、勘違いするなよな! リズ
赤くなって慌てる美緒奈。
でも、すぐに、八重歯覗く唇へ悪戯な笑みを浮かべて。
「けどせっかくだし? 皆さんの期待に応えてやっか☆」
ちょびっと強引に、男っぽい仕草で由理と腕を組んでくる。
会場の人々から、黄色い歓声が上がる。
「腕組んでる! 腕組んでるよあの2人♪」
「やっぱり、カップルなんだ! 女の子同士でカップルなんだ!!」
由理の頬が林檎色に。
「ちょ、目立ちまくってるんですけどー!?」
その動揺も気にせず、美緒奈は会場全体に見せつけるように。
「『ひとりぼっちは、さびしいもんな。いいよ、一緒にいてやるよ、さやか』♪」
アニメの台詞を口にしながら、つま先立ちで。
由理の頬に、ちゅっとキスをした。
「「「キマシタワー!!」」」
会場から万雷の拍手だ!!
そんな、皆の羨望と称賛を一身に集めながら、由理は。
どーもどーも♪と手を振るサービス精神旺盛な美緒奈とは違って、
「見られるのって……は、恥ずかしい……!!」
頬の熱さに、ここから消滅したい気持ちでいっぱいになるのだった。
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