パンフレットを作ろう!

「へえ、季紗きさってばイラストとかも描けるのね。すごいじゃん」


 百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」のメイド店員4人、今日のお仕事は、無料で配るパンフレットの作成。


 ペンタブを使い、キュートな動物のイラストを描く季紗に、由理ゆーりは感心する。


「ふふ、私こういうの得意なの」

「さすが季紗姉。漫画家さんみたいだぜ!」


 尊敬の眼差しを季紗へ送る美緒奈みおなへ、由理、


「美緒奈は描けないの? あんた漫画とか好きでしょうに」


 その問いに美緒奈、つるぺたな胸を張って、


「ふふん、この美緒奈様はな、何を隠そう美術も赤点なのだっ!」

「美緒奈ちゃん、それ自慢になってないよ?」


 優しい声色で、季紗はそっと指摘してあげた。

 由理も呆れ顔で、


「美緒奈、家庭科も赤点でしょ。なにか得意なことないわけ?」


 美緒奈、少し考えて。

 きゃるるん♪と可愛らしく媚びたポーズでにこり。


「あたし、めちゃくちゃ可愛いぜ? それが長所ってことで♪」

「自分で言うか!」


 ※ ※ ※


「はい、では写真を撮りましょうか♪」


 やってきたリズ、にこにこしながらカメラを構える。

 パンフレットに載せる写真の撮影だ。


「って、またキスするんですか!?」


 由理、メイド服姿で季紗と向かい合い、指を絡めて照れる。

 ちなみに季紗は、もちろん積極的。


「当然だよ、お店のパンフレット用だもの! 私達の同類さん達に希望を贈れるような、素敵な百合キス写真を撮らないと」

「いや私は、同類じゃないんですけど……」


 そんな由理の声は無視して、百合キス撮影会が始まった。


 まずは由理×季紗。


「んっ……、ふぅっ、くぷ。あむぅ! 季紗、そんな奥まで、苦し……っ」


 口蓋の奥、喉の奥まで挿入された薄桃色の舌が、別の生き物みたいに蠢いて。

 蜂蜜のように甘い唾液を循環交換しながら、息苦しさに頬を紅潮させる。


 1枚目から濃厚な百合キス写真が撮れて、嬉しそうに声を弾ますリズ。


「素敵……素敵すぎるわ! なんて清らかな光景♪ 純情由理ちゃんと清楚な季紗ちゃん……絵になるわね♪」

「ふんっ、由理デレデレし過ぎ。季紗姉が美人だからってっ」


 腕を組んで横を向く美緒奈。なんだか怒ってる。


「べ、別に私、デレデレなんて……ちゅくぅ♪」

「ふふ、照れてる由理可愛い♪ ちゅぶぅ、んぶ、ちゅ……♪」


 唾液が泡立つくらい激烈な接吻。

 淑女にあるまじき過激な行為をしても、それでも季紗のキス顔は、清純系アイドルみたいで。


 由理は、


(……やば。私、ちょっとドキドキしてる)


 東宮ひがしみや季紗きさ

 亜麻色のさらさらロングヘアー、麗しの清楚系お嬢様メイド。

 その長い睫毛と、細いくせに出るところは出たカラダから立ち昇る、桃のような薫りに。


 由理は溺れちゃいそうになって、赤面するのだった。


※ ※ ※


「パンフレットだからな。写真1枚だけってわけにはいかねーよな!」


 ツインテールの毛先をいじりながら、頬を赤らめるロリメイド美緒奈。

 八重歯を覗かせて、とってもキスしたそうな顔で、


「あ、あたしは誰とでもいいんだけどっ。由理、美緒奈様にキスしてほしそうだし、仕方なく? 天使のチュウを恵んでやるから、感謝しろよな?」

「いや私、口の中季紗の味でいっぱいだし。もう満腹なんだけど」


 舌が溶け合う特濃ベーゼの残り香に、頬の赤みが引かない由理。

 美緒奈とのキスをつつしんで遠慮するが、


「う、うっさいばーか!? 超絶プリティ天使エンジェルな美緒奈様が、キスしてやろーってんだからっ。ありがたく受け取れっ!?」

「んぷぅ!? ちょ、だからいらないって……じゅぷぅ……んん!?」


 ちゅぷ、ちゅぷ。ちゅぷぷ。

 びちゅぅ、びぢゅる。


 水溜りを叩くような、豪快な音を立てて。

 激しく由理の唇を吸う美緒奈は、まるで餓えた腹ペコ狼さん。


「ちゅぷ、んずぷ……ぐぷぐぷぅ♪ どーよ、美緒奈様のキス。甘いでしょ……?」


 そうだと言って。否定しないで。

 潤んだ瞳が、訴えかける。


「んっ、むぅぅ……!? わ、分かったってば。甘いから、美緒奈の唇は甘いから! だから落ち着いてぇぇっ!?」


 乙女の純潔ごと捧げるみたいな、とろとろストロベリーパフェより極甘の暴走キッス。


 これもばっちり写真に収めながら、リズと季紗が興奮する。


「あらー♪ 美緒奈ちゃんも大胆! 私も、こんな風に食べられちゃいたいかも♪」


 巨乳を揺らし、夢中でシャッターを切るリズ。

 季紗は発情した瞳で、


「み、美緒奈ちゃん、やっぱり由理のこと……。どうしよう、いろいろ妄想が膨らんじゃうよぅ!?」

「ちゅぷぷちゅぷ、ずぷぬぷぅ……♪」


 南原みなはら美緒奈みおな

 赤毛のツインテールを揺らす年下メイドの、貪るようなキスに。


 由理は、


(な、なんなの? 口ではどうでもいいみたいに言うくせに……)


 今はまだ、戸惑うばかりだった。


 ※ ※ ※


「……ねえ、由理ちゃん。私も、キスしたいな」


 そして、最後は。

 もじもじ羞じらいながら、口づけをおねだりする金髪巨乳メイド、リズ。

 ドリル状の縦ロールに、主張の激しすぎる胸。

 その乳とは裏腹に、青い瞳の童顔に浮かぶ表情は、姉に甘える妹のようだ。


 照れながら上目遣いで見つめてくるリズを、由理は思わず、可愛いかもと、


(って、私は何を考えてるのよぉぉぉぉ!?)


 ときめく胸に、自分がノンケであるという自信を喪失!

 でも、仕方ない。リズのぷにぷに柔らかそうな、ピンクの唇を見ていると……。


「も、もうっ。リズさんだけ仲間外れじゃ可哀想だし。仕方なく、ですよっ」


 由理の方から顔を近づけて、唇を奪った。


「ちゅ……ん。ふぁ……」


 れるれる、と、優しく触れ合う吐息。

 泉で乙女が竪琴を奏でるように、そっと、たおやかなキス。


(あ……柔らかい……)


「ふぁ、んくぅ♪ ちゅ、んんっ。ゆ、由理ちゃん、胸は……だめぇ♪」

「手、手が勝手に!? でもこの魅惑の柔らかさ……♪ 指が離せないよぉ!?」


 たとえるなら極上羽毛の枕。揉む指を適度に押し返しつつ吸い付いてくる、絶妙な張り。

 リズさんのおっぱいは、地球上で最も揉み心地の良い物体ではないかと、由理は思った。


 乳を揉まれながら、蕩けた顔で唇を委ねるリズの姿に、季紗と美緒奈は頬を染めて。


「ハァ、ハァ……リズさん気持ち良さそう。やっぱりリズさんは『受け』だと思うの♪」

「う、『受け』かー。『受け』って、どうすればなれるのかな。あたしも由理の方から、あわわ何でもないっ!?」

「んんっ、ふぅ……。むぅ、んむぅ……♪」


 喘ぎ声交じりの、抱擁キス。

 爽やかレモン味の温かな唇に、由理の頭はくらくら。


(私、もうノンケじゃなくていいかも……)


 なんて考えが一瞬よぎって。


「な、なに考えてるのよ私はぁぁぁ!? うわぁぁんでもリズさん、いい匂いだよぉぉぉ!?」

「ちゅぷぅ♪ 由理ちゃん、私のこと、もっと好きにしてぇ♪」


 リズ=ノースフィールド。

 18歳、4人の中では1番のお姉さん。


 でも甘えん坊で寂しがり屋な彼女に、由理はつい保護欲をかき立てられて、


「私はノンケ、私はノンケ……!」


 自分に言い聞かせながらも、ついキスしてあげたくなっちゃうのだった。


 ※ ※ ※


 完成したパンフレット。

 女子高生メイド同士の百合キス写真が、いっぱい載ったパンフレット。

 それをチェックしながら、店主マスターとおるお姉さんは。


「これって世に出していいのだろうか……」


 真剣に悩むのだった。

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