下着を交換しよう! ……なにゆえ?

 試着室の中で、4人は裸。

 床に散乱した衣服と下着が、カラフルなお花畑のよう。


「く、くぅ……。私、もうお嫁いけない……っ」


 新手の身体測定。

 全部剥かれて、カラダ中をちゅっちゅちゅっちゅチェックされた由理ゆーり、うらめし気な視線だ。

 美緒奈みおなとリズ(2人も裸)が、季紗きさへ軍隊式の敬礼で、測定結果を報告する。


「季紗隊長。由理の全身、触診終了であります! それはもうすみずみまで! サー!」

「由理ちゃんの太ももに脇腹……とっても柔らかかったであります! サー! なんだか良い匂いもしたであります! サーッ!!」


 季紗軍曹(もちろん裸)もビシッと敬礼ポーズを返し、労をねぎらう。


「うむっ、諸君の奮闘に感謝するっ。これで由理の3サイズだけでなく、汗の蒸れやすいトコロに、お尻の黒子ほくろの位置まで、完璧なデータが入手できた。任務完了ミッションコンプリートであるっ!」

「し、下着買いに来ただけなのに! なんで、えっちなコトされるわけぇっ!?」


 涙目由理の抗議も、季紗たち百合十字軍リリィ・クルセイダーズ(今結成した)には届かない。

 由理のパンツを手に、3人で品評。


「爽やかなミントブルーにシンプルなデザイン……とっても清純系で、いい趣味ですね♪」

「はわわ、由理ちゃんの温もりが……! 季紗ちゃん、美緒奈ちゃん! こ、これはお宝よねっ」

「べ、別にあたしは欲しいとか思わねーけど。分けるならちゃんと3等分だぜ?」


 怪しげな密談。


「……ねえ、パンツ返してよ」


 前を隠しながら由理が睨んでやると。

 亜麻色のロングヘアーを汗ばんだ珠の肌に貼りつかせ、季紗が微笑んで。


「ふふ、せっかくだから私の赤のパンツと交換しましょう?」

「せっかくだからの意味が分からない!?」


 真紅デスクリムゾンな色のパンツを差し出されても!

 困るが、デザインはおしゃれでせくしー。


「い、いや、やだよ。人のパンツもらってもさ。それに私の、安物だよ? 季紗の高そうだし、釣り合わない……」


 にこにこにこにこ。

 笑顔の季紗、美緒奈にリズ。

 由理に、拒否権は無いようだった。


「……えー。なんなの、これ?」


 というわけで下着交換。

 由理が季紗の、季紗が由理のブラを着け、パンツを穿く。

 ぬるっ。


「うぁぁ! 季紗のパンツ、ちょっと濡れてるしぃぃ!?」


 ……せ、清潔ですよ?

 かなりぶかぶかなブラのカップに心を打ちのめされながら、後ろの3人を睨んでやると。


「ど、どうなの季紗姉! 由理のショーツの感触は!?」

「ね、ねえ季紗ちゃん、匂い嗅いでもいいかな。いいかなっ?」


 裸のままの美緒奈とリズに熱い視線を贈られ、季紗はぽっと頬を染めて嬉しそう。


「あんっ、由理の温もりに包まれて……私、抱かれちゃってるみたい♪ や、やだ、なんだかドキドキ……♪」


 これでは、交換した下着も濡れるのも、時間の問題でしょう。

 くちゅぅ。


「……変態とは思ってたけど。こ、ここまでだったとわ」


 東宮ひがしみや季紗への認識を改めた由理。

 いつもよりスースーするパンツにもじもじしながら、家路へ着くのだった。


 ※ ※ ※


 数日後。

 百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」の店内を掃除しながら、メイド服姿の由理は気付いた。


「……結局下着買ってない!?」

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