罪には罰を。
〈2015年エイプリルフール初出〉
体重、軽い。
わりと長めの赤み掛かった髪をツインテールに、黒い大きなリボンで結っている。
それが、歩くとピョコピョコ、小動物のように揺れてとってもキュート。
くりくりした大きな瞳、
もちろん胸はAカップ、胸というか壁。でもくじけない。
それが希少価値であることを、ステータスであることを、美緒奈は自覚している。
……時々、リズや
さて、そんな見た目小学生な美緒奈、マンションの自室、鏡の前で。
きらきら、フリフリの魔法少女コスチューム姿でした。
「天に星、地には花、人には百合を! 魔法少女セイントリリィ、華麗に参上☆」
白とピンクの可憐なコスチュームで一回転、魔法のステッキをくるり☆
すわ、彼女は魔法少女だったのか!?
……いいえ、コスプレです。
「はぁ、我ながら魔法少女コスの美緒奈様は、可愛すぎて萌え死ぬぜ♪」
自画自賛。高校生でフリルたっぷりの魔法少女服は、ちょっと「痛い」かもしれないが、似合うのだから仕方ない。
「次のイベントも、やっぱこれかなぁ。でも『レズ
鏡の前でにへへー、と頬を緩ませるロリータ美緒奈。基本的に、自分大好き。
ちなみに、このコスプレ衣装は手縫いである。
といっても家庭科赤点の美緒奈なので、自分でではなく、母親作成。
オタ趣味の母娘という、幸せ家庭なのだ。
そんな家へ美緒奈は、バイト代の一部を入れている。
彼女ががんばれば、母の機嫌が良くなり、コスプレ衣装が増えるという仕組み。
「……けど、やっぱりこれが一番だよね。美緒奈様の魅力を引き立てるにはさ♪」
にぱっと笑って、彼女が取り出したのは。
純白のエプロンとヘッドドレスに、黒が映える上品なメイド服。
百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」の制服。
愛しそうにメイド服を抱き締め、くるくる鏡の前で回りながら、夢心地。
「これが着たくて百合メイドになったんだもんな。メイドなあたしは……宇宙の宝だぜ♪」
……自分でそんなこと言えるのが、南原美緒奈という少女なのだった。
※ ※ ※
さて、今日は4月1日、エイプリルフール。
こういうイベント事には乗らずにおかない信条の美緒奈、営業中の「リトル・ガーデン」で今日も紅茶を口移ししたり、ケーキを頬に付けて舐めてもらったり、いつも通りの百合営業をしながら、
(へへー、あたしの必殺の嘘で、皆をおどかしてやんよ♪)
タイミングを見計らっていた。
「きゃー、今日も美緒奈ちゃん可愛い♪ ロリ可愛い♪」
年下好き、あるいは後輩好きの少女達が黄色い歓声。
「えへへぇ、お嬢様ったら美緒奈照れちゃうよ♪ ……でもね」
……今だ。
舌なめずりをして、M心をくすぐっちゃうスイートデビルな笑顔で。
「実は美緒奈はね……『男の娘』なんだよ☆」
空気が、凍った。
「リトル・ガーデン」の店内は、その瞬間確かに、南極の温度を下回る氷の世界と化した。
(……あれ、嘘が効き過ぎた?)
やば、と心の中で焦る美緒奈へ、常識人な
「……あんたねえ、つくならもうちょっとマシな嘘を」
バターン、リズ卒倒!!
ピュアな彼女には「実は男の子とキスしていた」という精神的ダメージが魂の許容範囲を超えてしまったのだッ!! 嘘だけど。
「ああっ、リズさんしっかり!?」
慌ててリズを助け起こす由理、一方季紗は、
「チェェェェェェェェェェェック!!」
本日2度目の奇声を上げた。
「確かめさせてもらうよ美緒奈ちゃん! 結果によっては、ハサミの出番です!! 早乙女さんっ!!」
「はーい、チョッキンする準備OKです♪」
季紗の指令に、黒髪の百合メイドが早速ハサミを用意っ!
流血の予感に由理あわあわ。
「ナニを切る気!? ナニを切断するつもりなのぉぉぉッ!?」
「き、季紗
ずりずり後ずさりしながら、青ざめる美緒奈へ、季紗は……。
「ふ、うふふふ♪ 怖がらないで、ちょぉっとパンツの中を確かめるだけだから♪」
美緒奈の腰に抱き付き、スカートの中に頭を突っ込んできた。
「にゃぁぁぁぁぁぁっ!? パンツ降ろさないでぇぇぇッ!?」
「逃げないで美緒奈ちゃん! これは貴女の身の潔白を証明する為にっ、必要なコトなんだよ! ……ハァハァ」
ロリータ美少女メイドのスカートの中に潜り込んで、パンツを脱がせようとするお嬢様メイド。
……男性諸氏は、真似すると犯罪になるので注意しましょう。
※ ※ ※
「良かった、やっぱり『ついてない』ね♪」
チェック終了。脱がせた美緒奈のパンツを片手に、額の汗を拭う季紗。
行為はともかく、外見は爽やか美少女。
「ううぅ、汚された気分……」
ノーパンでスースーするスカートを抑えながら、美緒奈は羞恥に震えつつへたり込んでいた。
お客様達も、羞じらう美緒奈の可愛らしさにご満悦。
嘘の件も、水に流してくれそう。
とはいえ、ついていい嘘と悪い嘘がある。
そのことを、卒倒したままのバイトリーダー、リズに替わって、季紗は先輩メイドとして、改めて美緒奈に諭して、
「反省した、美緒奈ちゃん? 罰として、このパンツは没収です!」
自分のポケットに、美緒奈のパンツを入れた。
「いや最後おかしい!? そのパンツどうするつもりなの季紗ぁぁっ!?」
由理のツッコミは、季紗に華麗にスルーされた。
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