くーるびゅーてぃ、溶ける。(後編)

「ひゃぁっ!? お嬢様、胸当たって、ますぅっ……」


 くちゅっ、ぬるぬる。

 シャワーの前に座ったまま、季紗きさに後ろから抱き付かれ、細い指で胸を、おへその下を撫で回されるふぶき。


「ふふ、もっと脚開いて。でないと洗えないわ?」

「んっ、くぅ……っ。そんなトコに、指ぃっ……だめれすっ」


 季紗の愛撫に肌を爪弾かれ、甘い声を奏でる楽器にされたよう。

 つい恥ずかしい喘ぎが漏れ出そうなのを、口を抑えて真っ赤な顔で我慢。


(クールビューティクールビューティふぶきはクールビューティ! えっちな声なんて出さないのです!)


「ハァハァ……羞じらうふぶきさん可愛い。もっと本気出しちゃうわ♪ えいっ」


 ぐちゅぅっ。


「ふぁ、ふぶき、溶けちゃぅっ……♪」


 湯気に曇るお風呂で、美少女同士ちょっと(?)えっちな裸のスキンシップ。

 東宮ひがしみや屋敷の夜は、今日もたっぷり百合色。


 ※ ※ ※


「ちゅぅ……んむっ。お嬢様、ふぶき、もうのぼせてしまいまふぅ……ちゅぷ♪」

「ふぅっ、ずちゅ、るふぅ……。だーめ、まだ、お口の中まで綺麗にしてあげるんだから。このキスで、ね? ぷちゅぅぅ♪」


 季紗の亜麻色の髪と、ふぶきのホワイトブロンド。

 どちらも腰まで届く長い髪が、もつれ絡み合って。

 石鹸の泡でぬるぬるの透き通った肌、火照ったカラダで密着。

 産まれたままの全裸でぎゅーっと抱き合って百合キス三昧だけど、お風呂で洗い合ってるだけだから問題無い。無いったら無い。

 女子高生としては平均的な身長の季紗、ふぶきの方が19歳と少し年上なのだけど、なにぶんふぶきは身長150cm未満のミニマムサイズなので、抱き合っていると季紗がむしろ姉に見える。

 きらきら煌めく髪と、星空色の瞳に長い睫毛。アイドルもびっくりの華やかな、それでいて清純な美貌の季紗。

 不用意に触れたら溶けて消えてしまいそうな、初雪のような白さのふぶき。

 2人、れろれろ、ちゅっぷちゅぷと唇を重ねて。

 ボディソープの薫りより、女の子の匂いが強くなるまで、ずっとキスに夢中。


「んにゅぅ……♪ ふぶき、もうクールビューティじゃなくてもいいれふっ……」


 とっくにドロドロ、メルティキッスに雪解け状態だ。

 そんなふぶきから唇を離し、


「ぷはっ……。やっぱりふぶきさんとお風呂は良いね。私も、なんだか火照っちゃったよ♪」


 かなりハードなコトをした後なのに、微笑むと背景に天使の羽根が舞う季紗。

 なにをしても絵になる超級美少女……この清らかさは、一種のチート性能ではないだろうか。

 こんな顔でにこっとされては、ふぶきも「お嬢様にでしたら……なにをされてもいいですっ♪」と胸がときめくのもやむを得ない。


「ふふ、そろそろシャワー浴びようか。またキスしようね、ふぶきさん♪ 具体的にはこの後ベッドで」


 まだする気だ。

 でも季紗の笑顔にふぶき、胸がちくり。

 朝、日記を覗き見た罪悪感と、季紗が他の女の子ともちゅっちゅしてることへのジェラシーと、2つの感情がない交ぜになって。


「あのっ、ご、ごめんなさいお嬢様っ」

「どうしたの、いきなり?」


 唐突ながら、ふぶきは謝った。


「……お嬢様の日記、読んでしまいました。ふぶきは悪い子です。クールビューティじゃないれすっ」

「にぎゃー読んだの!? ど、どこまで!?」


 ふぶきの告白に、あわあわ飛び上る季紗。


「はい、昨日のところを。その、『リトル・ガーデン』の皆様と何回キスしたとか……」

「ああ、そこか。そこね……」


 危なかったぁ、と胸を撫で下ろす季紗。

 小声で、


「良かった、前の頁の《放送禁止》とか《放送禁止》とか妄想書いてるところ読まれたら、さすがの私も恥ずか死んでたよ……。危ない危ない」


 どんな内容を書いていたのかは、とても教えられない。


「お嬢様……?」

「な、なんでもないっ。なんでもないよふぶきさん。それより、ごめんね? 変なの読ませちゃって」


 日記を覗き読まれたのに、怒るより謝る季紗。

 変態さんだけど、心はとっても清らかなのだ。


「引いちゃったよね。やっぱり私、おかしいかな? 日記に百合キスのコトばかり書いたりとか」

「い、いいえっ。お嬢様は素敵な方です、おかしいところなんて無いですっ」


 それよりふぶきが気になるのは!

 やっぱり西城さいじょう由理ゆーり……季紗に、自分より多くキスしてもらっている幸せガールのコトだ!

 どんな女か、顔を見なくてはならないっ。


「お嬢様が熱心に働いてるのを読んで、ふぶき感動しました。そ、それでですねっ」


 ごくり、と息を飲んで、小さなクールビューティふぶき、


「お嬢様の仕事風景、この目で見たいです! 『リトル・ガーデン』へ見学に行っていいですか!?」


 ……百合修羅場不可避。これは、血の雨が降るかもしれない。

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