出会い編 ③ 由緒正しき百合メイド喫茶の歴史。

 西城さいじょう由理ゆーり、17歳の高校2年生。

 メイド喫茶、「リトル・ガーデン」のバイト採用試験、合格である。

 ちなみに試験内容は、金髪美少女の胸を揉むという内容。


「ん、く……。こ、この私を、ここまでドキドキさせるなんて。素晴らしい素質よ西城さん、貴女なら、この店のエースにだってなれるかも知れない!」

「……なんの試験、これ?」


 うっとりしながら褒め称えてくる金髪メイド、リズに、由理の頭上のハテナマークは増えざるを得ない。

 ともあれ早速、仕事場を見学させてもらうことになった。

 廊下を歩きながら、リズが解説。


「……この『リトル・ガーデン』はね、それはそれは由緒正しいメイド喫茶なのよ。何たって前身は350年以上前、江戸時代の寛永年間に出来た女色茶屋にょしょくちゃやなのだから」

「はぁ、すごいですねー。ところで、にょしょくちゃや、ってなんですか」


 首を傾げる由理に、


「吉原の遊郭は知ってるでしょう? そこで働く遊女たちが絆を深め合うために創った、大人の社交場よ。女の園の大奥とも影で繋がって、それはもう人気だったのですって」


 リズが熱く語ってくれるが、由理の頭の中は、


(……うん、とりあえずすっごく歴史があるらしい)


 ぐらいの認識で思考停止していた。

 仕方ない、いつも歴史のテスト赤点すれすれの由理には、難しい単語だらけなのだから。

 江戸時代だなんて、源頼朝が幕府を開いたというくらいしか分からない。

 ……徳川家康? 残念ながら彼女には、卑弥呼との区別がついていない。絶望的だ!

 外人のリズにも、まったく適わない程度の知識量なのだ!

 で、結局女色茶屋とは何なのか。


「ふふ、うちの仕事内容を見れば分かるわ♪」


 店内へ通じる扉を、リズが開ける。

 それは、天国への扉か。あるいは禁断の……?

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