第83話 子どもについて
私たち夫婦には子どもがいない。
そして私は子宮と卵管、卵巣を摘出したので
子どもを作ることは出来ない。
癌になる前は、このまま子どもが授かれないならば養子も考えたいと思っていた。
それに関して一番最初のキッカケは義母が
本当にチラリとだけ
「養子を考えてみるのもいいかもしれないしね」
と言った事が始まりだった。
義母としては子どもを産むには高齢になってきた私に気を使っての発言なんだと思う。けれど、何がなんでも後継をと思われるより救われると思ってありがたかった。
その時は、それぐらいの感覚しかなかった。
それが40を過ぎ、43となり本気で考えていったほうが良いのかなと思うようになってきた。
ところが私の体調がどんどん悪くなっていったのだ。
更年期だろうと思ってやり過ごしていたけれど
それは今から思うと子宮体癌の前兆だったのだと思う。
そうなってきた時に、これでは養子をもらうどころではないと思った。
癌になって子宮を摘出することが決まった時には、より養子を考えるのは当分先だなと決定的になった。
これからしばらくは、私は自分の体の事でいっぱいいっぱいになる。
別の命の事にまで責任を持つには、今ではないと考えたからだ。
だからといって、妊婦さんを見ても悲しくならないし
小さい子を見ても特に辛い気持ちにならない。
それどころか芸能人の人たちのおめでたの話を見聞きすると、嬉しくなってしまうのだ。
「お願い、元気に生まれてきてね」
「はやく、子育ての話を聞きたいな」
と思ってしまう。
これは昔はここまで思わなかった。
私としては、明らかに子宮が無くなってからの方が
こういう気持ちが強いのだ。
何故なのか分からない。
けれど感情移入するかのごとく人の妊娠や子育ての話が嫌どころか
見守りたくなってしまうのだ。
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