第3話 だから、散歩をしましょう?

永保寺を立ち去ったあと、自分でも驚くほどの量の食料品を買い込み、同じような家が林立する住宅街でやっとの思いで家を見つけた頃には辺りはすっかり暗くなっていた。

そして今、私は玄関マットの上で土下座をする夫と対面している。

うん、一体どういう状況なんだろう。

「ただいま?」

とりあえず挨拶をする、と

「ごめんなさい!

実は、仕事うまくいってないです。

君に八つ当たりみたいな態度までしました。

本当にごめんなさい。」

まるで子供が母親にするかのように必死で謝られてしまった。

ん?私が出て行ってしまうとでも思ったのかな?

そんなことしないのに。

思わずその必死さに微笑んでしまった。

よし、ここは夫の勘違いに付き合うとしよう。

「仕事の話はお義兄さんから聞きました。

どうして夫のことを義兄から聞かなきゃいけないんですか?」

ここぞとばかりに普段は滅多に使わない敬語をフル活用だ。

「ごめん、ほんとにごめん。

俺から言うべきだったよな。」

わかってるならもっと早く言ってくれたらよかったのに、まあ今更すねても仕方ないか。今言ってくれただけで満足だよ。

「わかってるならいいよ。

でもさ、家にいてばかりじゃ良くないよ。

お義兄さんの気遣いできるも無駄にしちゃうし。」

私は随分小さく感じられる夫の背中を見つめて少し潤んだ声でつぶやいた。

「だから、一緒に散歩でもしよう?ね?」

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だから、散歩をしましょう? 羽純燈伽 @57wkw22a

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