オライオン

第109話

 中間テストが終わった次の日曜日が西川のオーディションの日だった。

 ユリカは倉田と多摩センターの改札で待ち合わせ、新宿で美山と落ち合った。美山は丈の長めのグレーのカーディガンに、黒地のチェックのスカート、ボルドーのニットキャップといったもはやゴスロリとは無縁の服装で現れた。彼女もまた、変わった。

 オーディションは昼からなのでその前に時間を潰すことになり、美山の提案で謎解きカフェに行くことになっていた。そこにはいくつかの部屋があって、それぞれ違うレベルの謎解きが用意されているという。

 須永の件を美山に話したときはだいぶ親身になって心配してくれたが、思ったよりもユリカが落ち着いていたので美山は拍子抜けしていたようだった。

 実のところ、ユリカは軽音部室で号泣をしたことは黙っていた。もうきっと後にも先にも、あれほど大声を出して泣くことは、たとえ親が死んだとしても人生の中でないのではないか、と思っていた。

 須永と横井の仲は公然のものとなり、文芸部のみんなはそれを温かい目で見ていた。理想的な組み合わせの2人の様子ははたから見ていても何か心地が良いものであった。

 ユリカはしっかりとその事実を受け止め、かつ2人を祝福した。不思議と、横井に対する嫉妬は全くといっていいほど無かった。むしろそうあるべきだという思いの方が強かったくらいである。もちろん、ひとりでいるとき、ふいとあの夜の軽音部室での寂寥感がよみがえることがあったが、友達とのおしゃべりや、勉強、そしてなによりもデスピノの活動がすぐにそれを打ち消してくれたのであった。

 12月にはライヴが2本も入っていた。ひとつは、人気のあるインディーズメタルバンドが対バンとして起用してくれたのである。マヤは目黒の鹿鳴館でライヴができると言って大喜びをしていた。そしてバナナフィッシュが新宿ロフトでクリスマスライヴを企画し、それにも誘われて参加することになっていた。

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