第97話

「みんな!ありがとう!デスピノでーす!」

 うおおおー!と大歓声が上がり、ユリカはその声の大きさに驚いた。

「佐久間―!いるかー!どこだー?!ちょっとここに来―い!」

 マヤがそう呼びかけると観客の後方から人波をかき分けるように生徒会長がやって来た。やっとのことで七三分けの乱れた佐久間がステージにい上がると、途端に観客からは大きなブーイングが起きた。

「まあまあ、みんな、落ち着いて。よく考えてみれば、生徒会長が1000人集めろって言ったから今日のこの日が来たんだよね。だから結果オーライだよ。ちなみに、佐久間、ここには何人集まったの?数えたんでしょ。」

 マヤからマイクを渡された佐久間は苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、一旦目をつぶり、観念したとでもいうような表情で口を開いた。

「入口でカウントした結果、1325人。すごい数だよ。君たちの勝ちだ。約束通り、鍵は返す。軽音楽部の活動も認めるよ。正直、こんなにも人が来るとは思っていなかったから、驚いているよ。これが、君たちの言う、音楽の力なんだな。」

 マヤにそう言ってから佐久間は客に向かった。

「皆さん。デスピノはとても困難な約束を果たしてくれました。正直言って、僕は彼らをめていました。1000人なんて集まるはずはないとタカをくくっていました。しかし今、僕は自分の判断の甘さを痛感しています。彼らの努力は霊徳学園の生徒として、非常に誇れるものです。これからも彼らを応援してください。僕ら生徒会も彼らを応援します。今日はデスピノのライヴにいらしていただき、どうもありがとうございます。最後まで彼らのライヴを楽しんでください。」

 彼は言い終わると同時に深く頭を下げた。

 観客たちは彼の潔さをたたえ、一斉に拍手した。ユリカもソメノもキイチも拍手をした。

 佐久間はマヤに向かって手を差し出した。マヤはそれをしっかりと握り返した。拍手はさらに大きくなった。

 佐久間は観客に対してもう一礼し、満場の拍手の中ステージから降りて、来た時と同じように人ごみをかきわけ、後方のドアから出て行った。

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