第83話
「ロウソクの火って本当に綺麗ね。呪文を唱えたら悪魔が出てくるんじゃないかしら?ね、大石さん、そういえば黒魔術の本とかも読んだんでしょ。何か知らない?」
美山が期待に満ちた目でユリカに尋ねた。
「いやいや、美山さん、わたしアレスター・クロウリーじゃないんだから!呪文なんて知らないよ。悪魔を呼ぶには、そもそも魔法陣とか書かなきゃならないだろうし・・・うーん、おうちからそれらしい本を持ってくれば雰囲気出たかな?」
「なんだー、大石さんなら知ってると思ったんだけどな。じゃスマホで調べよ。魔法陣っと・・・あった、うーん、どうすればいっかな、そうだ、教卓の下にある数学用のコンパスでまずは円を描いて・・・」
美山は本気で魔法陣を床に描こうとしはじめた。しかし学祭中に悪魔に出て来られても困るので、様子を見ていた須永はさりげなく注意を逸らした。
「美山さん、実は、外、もう人が並んでてさ・・・。あの、なんか似たような服着ている子が2人ほどいるみたいなんだけど。」
「え、ホントですか?ひょっとして友達かな。ちょっと見てきます。」
そう言って美山は出て行き、すぐに教室の外からはきゃあきゃあ、という声が聞こえてきた。
須永はホッとした様子でつぶやいた。
「朋有り、遠方より
ちょうどその時、ぽん、ぽんぽん、と校庭では学祭開始を告げる祝砲花火が打ち上げられた。
須永の読み通り、開店するとすぐに『ザ・ビューティフル・ピープル』は満席となり、外には行列ができるほどの盛況ぶりである。ほとんどは興味本位の客であったが、中にはかなり気合が入った美山の同好の士たちもやってきた。
おかげでユリカたちは午前中てんてこ舞いで、息つく暇もないほど何度もテーブルとカウンターを往復した。メニューをカプチーノセットのみ、という潔さにしておかなかったらもっと大変だっただろう。コーヒーと同時に手渡される部誌を、薄暗い燭台の光を頼りにぱらぱらとめくる客を横目で見ながら、ユリカは彼らがどんなふうに感じたかを聞いてみたい気もした。
慣れないウェイトレスの仕事を、ユリカがようやくこなせるようになった午後一時近くなって、マヤとソメノがやってきた。
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