おまけ① ガールズトーク

 消灯時間。

 と言われれば、修学旅行生たちは一気に目を覚ます。

「折角男子居ないんだから、普段出来ない話がしたいよね!」

 と木夏咲こなつちゃんが目をキラキラさせて言う。

「そうだね! 折角だから、クラスの男子のどのCPが1番萌えるかを決めよう!」

「咲ちゃん、木夏咲ちゃんが言いたいのはそっちじゃないと思うけど……」

 ひよりんは咲っぺにふんわりとしたツッコミを入れた。

「えー⁉︎ じゃあ何話すのー?」

の他ないでしょう‼︎」

 ドドーン!と効果音の付きそうなドヤ顔で木夏咲ちゃんは言った。

「えー⁉︎ 私好きな人居ないよぉ〜」

「良いから良いから!」

 木夏咲ちゃんは咲っぺをなだめてから、言った。

「じゃあ、今好きな人が居る人〜?」

「「「……」」」

「居ないんだね」

「木夏咲ちゃんは居るの?」

「居ないんだな、これが」

「ダメじゃんっ‼︎」

「じゃあさ、好きな人が居人は〜?」

 全員が、スッと手を挙げる。

「……咲っぺ居たの⁉︎ 3次元で⁉︎」

「心優こそ‼︎」

「日和ちゃんも居たんだね〜」

「木夏咲ちゃんも〜!」

 ひよりんは知ってるけど……、木夏咲ちゃんは彼氏居ても可笑しくなさそうだけど……、咲っぺが意外すぎるんだけど⁉︎

「え、みんな居るの? じゃあ、その頃の話しても良いって人は〜?」

「私は別に良いよ」

 咲っぺは枕を抱き抱えて言った。

「じゃあ、咲ちゃんからで!」

「はーい」

 咲っぺは枕を抱えたまま、少し頬を赤くして話し始めた。

「私、北海道にずっと居たって話したじゃない? そこで、好きな人居たの。

 中学は引っ越して結構人口の多い街に居て、学校もそれなりの人数がいた中で……なんか、クラスではそんなに目立たない方の子が居たんだけど、私見ちゃったんだよね。

 その人、放課後に誰もいない教室で黒板アートを1人でやってたの。

 その頃丁度黒板アートにハマってたから、思わず声を上げちゃって、見てた事気づかれちゃったの。

 でも、そこがキッカケでその人と話すキッカケが増えていって……いつの間にか好きになってた〜って感じ?」

「青春だなぁ〜」

 木夏咲ちゃんは楽しそうにその言葉を噛み締めていた。

「でも、今考えたら、本当に好きだったのかな? って感じだけどね。」

「恋ってそんなもんじゃない?」

 私がボソッと呟くと、全員の視線が集中した。

「心優ちゃんの恋バナは?」

「……じゃあ、ちょっとだけね。」

「いいよいいよ! ちょっとでもたっぷりでもいいから聞きたいっ‼︎」

 木夏咲ちゃんは足をバタつかせて言う。可愛すぎなんですけど。

「……私も中学の時に好きな人居て、告ったことあるんだよね、」

 その瞬間、全員の呼吸が止まった。

「心優、勇気あるねぇ」

「フラれたけどね」

 また呼吸が止まった。

「フラれ方が……まぁ、酷かったんだよね。もうほぼトラウマだね」

「あれは本当に酷かったよね……」

 ひよりんは眉尻を下げてため息混じりに言った。

「え、どういう……?」

 咲っぺは喉をごくりと鳴らし、木夏咲ちゃんは恐る恐る聞いてきた。

「『誰もお前みたいなオタク、好きになるかよ。身の程を知れ』だってさ。今考えてみたら、そんなにイケメンでも無かったし、性格よろしく無かったし、あの時の言動がどうもナルシストのように思えて仕方がない。なんで好きになったんだろう。今となっては大っ嫌いだよ」

「そんな事言う人、居るんだね、サイテー」

 木夏咲ちゃんは拳を握りしめて呟いた。オーラがっ……殺気がっ……。咲っぺは唖然としている。すると、ひよりんがハッとして呟いた。

「もしかして、佑君が心優ちゃんのこと避けてたのって、佑君のせいでフラれたと思ったからなんじゃないかな」

「……! ひよりん天才‼︎ そうかもしれない!」

「佑君優しいね〜、実は私、去年まで佑君のこと好きだったんだ〜」

 サラッと木夏咲ちゃんが爆弾を投下した。

「「「えええぇぇぇっ‼︎⁉︎」」」

 思わず3人揃って叫んでしまうと、廊下からパタパタと足音が聞こえてきて、先生に「早く寝なさいっ!」と叱られたので、仕方なく、私達は眠る事にしたのだった。

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